事業承継するときの社長の平均年齢は何歳でしょうか?
実は、中小企業の経営者の平均引退年齢は67~70歳といわれており(参考:中小企業庁「経営者のための事業承継マニュアル(PDF)」)、その時期が事業承継のタイミングとみてよいでしょう。
しかしながら、中小企業・小規模事業者の経営者のうち、65歳以上の経営者は全体の約4割を占めており、あと3~5年で多くの中小企業が事業承継のタイミングがくると予想されます。
そのときになって、大事に育ててきた会社を後継者にいきなり「はい、どうぞ」というわけにはいきません。
本記事では、事業承継のベストなタイミングに合わせて、事業承継の準備をいつから始めたらいいのか?事業承継後の身の振り方についてなどをお伝えします。
事業承継を着実に進め、ハッピーリタイアで第2の人生を謳歌しましょう。
事業承継の平均年齢は?事業承継のタイミングを逃さないために
「そろそろ歳だし、事業承継をしようかな?息子が次期社長だ!みんな息子を支えてやってくれ」
そんな感じで、いきなり後継者に会社を承継すると、うまくいかない可能性が高まります。
何事にも準備というものが必要です。
つまり、事業承継を進めるためには、事前に計画を立てることが必要になります。
では、実際に事業承継を進めるために計画を作って実行している企業はどのくらいでしょうか?
帝国データバンクの調査によると、企業の4割で事業承継の計画があるものの、そのうち半分がまだ進めていないという結果があります。
【出典】帝国データバンク「事業承継に関する企業の意識調査(2020年)」(PDF)より作成
また、事業承継の計画があると回答した社長の年齢別をみると次のとおりです。
【出典】帝国データバンク「事業承継に関する企業の意識調査(2020年)」(PDF)より作成
社長が70代になるに向けて「事業承継の計画があり、進めている」割合が多くなってきていますが、80代以上になると減少しています。
その点、「すでに事業承継が終えている」と回答している社長の年齢は39歳以下、40代が多いという結果もあります。
事業承継のタイミングは、早ければ早いほうがいいという人もいますが、まだまだ後継者には任せられないという人もおり、会社の状況に応じて計画をしっかり立てておく必要があります。
そのため、準備不足のままの事業承継では、今まで大切に育ててきた「人」「資産」「知的資産」の承継がスムーズに進まず、会社を存続の危機に陥る可能性があります。
経営権、後継者の選定・育成、後継者との対話、後継者教育
株式、事業用資産(設備・不動産等)、資金(運転資金・借入金等)、許認可
経営理念、経営者の信用、取引先との人脈、従業員の技術・ノウハウ、顧客情報
また、事前にしっかりとした事業承継計画はあったとしても、計画の実行が進まず時が過ぎていくのであれば、社長の年齢が進むにつれ、ベストな状態での事業承継はますます厳しい状況になります。
事業承継のタイミングは自分で決めていかなくてはなりません。
事業承継のタイミングを逃さないよう、事前に事業承継のための計画を立てるだけでなく、その計画を実行する覚悟を持ちましょう!
>>事業承継が進まない理由ランキング!早めの事業承継計画で会社を守ろう!
事業承継はいつから準備したらいい?
では、事業承継はいつから準備をしたらいいのでしょうか?
冒頭でもお伝えしましたが、中小企業庁「経営者のための事業承継マニュアル(PDF)」では、中小企業の経営者の引退年齢は平均67~70歳であると記しています(会社の規模や業種などにもよります)。
つまり、中小企業の経営者は67~70歳くらいで事業承継または廃業するケースがあるということです。
さらに、事業承継には後継者の育成を含めて5~10年の期間が必要だとも記しています。
67~70歳くらいで事業承継のタイミングがくるということは、遅くとも60歳くらいから事業承継の準備が必要だということになるでしょう。
>>事業承継は誰に相談するといい?13の支援機関とお悩み別相談先を紹介!
事業承継の準備を始める5つのステップ
ここからは、事業承継の準備についてお伝えしていきます。
事業承継の準備は次の5つのステップに沿って行います。
【ステップ②】経営の現状把握で見える化
【ステップ③】経営改善で磨き上げ
【ステップ④】事業承継計画策定
【ステップ⑤】事業承継の実行
それでは、順番に見ていきましょう。
【ステップ①】事業承継の方向性を明確に
事業承継の準備のステップ①は「事業承継の方向性を明確に」です。
5年後、10年後と続いていく会社を誰に?いつ?どんなふうに託すのか?など、事業承継の方向性を明確にすることは事業承継の第一歩です。
特に、後継者の選定はとても重要になります。
事業承継は①親族への承継②役員・従業員への承継③社外への引継ぎ(M&A)と3つのカタチがありますので、まずそこから決めていきましょう。
類型 | 概要 |
親族内承継 | ・現経営者の子をはじめとした親族に承継させる方法である。 ・一般的に他の方法と比べて、内外の関係者から心情的に受け入れられやすいこと、後継者の早期決定により長期の準備期間の確保が可能であること、相続等により財産や株式を後継者に移転できるため所有と経営の一体的な承継が期待できるといったメリットがある。 |
従業員承継 | ・「親族以外」の役員・従業員に承継させる方法である(以下「従業員承継」という。)。 ・経営者としての能力のある人材を見極めて承継させることができること、社内で長期間働いてきた従業員であれば経営方針等の一貫性を保ちやすいといったメリットがある。 |
社外への引継ぎ (M&A) |
・株式譲渡や事業譲渡等により社外の第三者に引き継がせる方法(以下「M&A」という。)である。 ・親族や社内に適任者がいない場合でも、広く候補者を外部に求めることができ、また、現経営者は会社売却の利益を得ることができる等のメリットがある。さらに、M&Aが企業改革の好機となり、更なる成長の推進力となることもある。 |
【参考】中小企業庁「2023年版 中小企業白書」第2章:新たな担い手の創出 第2-2-10図 事業承継の類型をもとに作成
【ステップ②】経営の現状把握で見える化
事業承継の準備のステップ②は「経営の現状把握で見える化」です。
会社の未来を考えるときには、経営の今の状況を把握することが必要になります。
これからも成長し続ける会社であるために「今、利益を確保できる仕組みができているか?」「商品やサービスは他社と比べて競争力を持っているか?」という感じに、会社の強みと弱みを再認識し、事業や資産、財務の見える化をすることでこれから取り組むべき課題が見えてきます。
【ステップ③】経営改善で磨き上げ
事業承継の準備のステップ③は「経営改善で磨き上げ」です。
先行き不安な会社を引き継ぎたいとは誰も思わないですよね。
事業承継の準備をしていく中で、会社の良いところを伸ばし、改善点を「強み」にシフトできるよう経営改善で会社を磨き上げていくことも必要です。
例えば、商品力を伸ばして新しい市場を開拓したり、人材育成を強化したり、経営のスリム化を図るなど経営改善に向けたアクションを後継者と会社全体で取り組むことで事業承継の土台を作っていきます。
【ステップ④】事業承継計画策定
事業承継の準備のステップ④は「事業承継計画策定」です。
経営の見える化と経営改善で磨き上げができたら、事業承継計画を策定していきます。
まずは5年後10年後に会社がどうなりたいかを明確にし、経営理念や方向性、目標を定め、そのためには今年はどうすればいいかといった具体的なアクションや数値などを計画書に落とし込んでいきます。
事業承継計画は後継者と一緒に考えていきましょう。そうすることで経営者交代しても経営が途切れることなく一貫性のある事業展開が望めます。
【ステップ⑤】事業承継の実行
事業承継の準備のステップ⑤は「事業承継の実行」です。
事業承継計画に沿って、株式、事業用資産、経営権などの承継を実行します。
事業承継は、経営者、後継者はもちろん、従業員や取引先など関係者に大きな影響を及ぼす作業です。支援制度の活用など事前の準備、対策を進めながら、事業承継の課題を解消し、計画的に実行しましょう。
事業承継前に準備する3つのメリット
事業承継に準備を早めにスタートすると、3つのメリットがあります。
【メリット②】後継者の手腕、適性をじっくり見極めることが出来る!
【メリット③】周りへの影響を最小限に抑えられる!
【メリット①】事業承継をベストなタイミングでできる!
事業承継前に準備するメリットの1つ目は「事業承継をベストなタイミングでできる!」です。
例えば、事業承継をしなくてはならない状況になってから慌てて引き継ぎをすると、バタバタな状態になり、うまくいかない可能性があります。
事業を承継できる体制を早い段階で整えることで、会社の業績、市場の動向を踏まえたベストなタイミングで事業承継を実行することが可能になります。
【メリット②】後継者の手腕、適性をじっくり見極めることが出来る!
事業承継前に準備するメリットの2つ目は「後継者の手腕、適性をじっくり見極めることが出来る!」です。
例えば、息子を後継者にと思い、経営者として育てていく中で、必要な能力がなかなか兼ね備えることができない場合があります。
そのときは経営者としての手腕や適性を見極めるために、後継者育成の見直しなど事業承継に必要な対策を早期に実行することができます。
【メリット③】周りへの影響を最小限に抑えられる!
事業承継前に準備するメリットの3つ目は「周りへの影響を最小限に抑えられる!」です。
例えば、十分な準備がないまま経営者が変わると従業員からの反発や取引先への信頼関係など、周囲に与える影響はとても大きいものです。
事業承継は身内だけの問題ではなく、会社全体の問題ととらえて十分な時間をとって計画的に進めることで、周囲の理解を得られる事業承継ができるようになります。
事業承継のタイミングを逃す2つの理由!
中小企業の経営者の平均引退年齢は67~70歳といわれています。
30年前の中小企業の経営者の引退年齢は平均61~62歳でしたので、経営者の引退年齢は6歳以上も上がっています。
引退年齢が上がるということは、事業承継の平均年齢も上がるということ。
どうして中小企業の経営者の引退年齢が上がってきているのでしょうか?
事業承継のタイミングを逃す理由は次の2つと考えられます。
- 事業承継のタイミングを逃す理由①「後継者不足」であるから
- 事業承継のタイミングを逃す理由②「後継者育成」に苦労するから
それでは詳しく見ていきましょう。
事業承継のタイミングを逃す理由①「後継者不足」であるから
事業承継のタイミングを逃す理由の1つ目は「後継者不足」であるからです。
後継者の決定状況についてのアンケートによると次のような回答が得られました。
- 事業承継のための後継者が決定している企業 12.5%
- 事業承継の意思はあるが後継者が決まっていない企業 22.0%
- 廃業を予定している企業 52.6%
- 自分はまだ若いので今決める必要がない 12.9%
【出典】「中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2019年)」日本政策金融公庫総合研究所)
後継者が決定している企業は12.5%である一方で、いろんな理由があるとはいえ後継者が決まっていない企業が87.5%にあります。
また、廃業を予定している企業の廃業する理由は「そもそも誰かに継いでもらいたいと思っていない」43.2%となっており、それ以外の理由として「子どもがいない」12.5%、「子どもに継ぐ意思がない」12.2%、「適当な後継者が見つからない」4.3%と廃業を予定している企業の3割くらいが後継者難による廃業と回答されています。
「後継者不足」により事業承継のタイミングを逃すどころか、廃業にもつながるんですね。
昨今では、親族間の承継だけでなく、従業員や企業外から後継者を選ぶ道がありますので、企業存続のために早いうちに検討しましょう。
事業承継のタイミングを逃す理由②「後継者育成」に苦労するから
事業承継のタイミングを逃す理由の2つ目は「後継者育成」に苦労するからです。
帝国データバンクの調査によると、事業承継で「苦労したこと」「苦労しそうなこと」ともに「後継者の育成」がトップという結果があります。
1位:後継者の育成 48.3%
2位:相続税・贈与税などの税金対策 31.7%
3位:自社株など資産の取扱い 30.5%
1位:後継者の育成 55.4%
2位:後継者の決定 44.6%
3位:従業員の理解 25.5%
【出典】帝国データバンク「事業承継に関する企業の意識調査(2020年)」(PDF)
経営者は、日々の経営に精一杯です。
なかなか「後継者育成」を始められない、または「後継者育成」に時間を要してしまうということから、経営者交代できず、事業承継の平均年齢が高くなってしまうのではないでしょうか?
しかし、事業承継の課題を先送りにしては後々大変なことになります。
後継者育成のタイミングを逃さないよう、事前に事業承継を進めるための計画を立てておくことで、安心して事業承継の時期を迎えることができるでしょう。
事業承継が終わった後の第2の人生をどう過ごす?
事業承継が終わった後の第2の人生をどう過ごすといいのでしょうか?
それは、あなたが会社に残るか残らないかで身の振り方は変わってきます。
会社に残る場合と残らない場合とでどんな人生があるか見てみましょう。
会社に残る場合
事業承継後、会社に残る場合は「会長職として会社経営をサポートする人生」が待っています。
後継者や従業員に権利移譲し、ご自身は会長職として会社経営をサポートします。
会社に残るという選択は、長年の経験からのアドバイスを引き継いでもらえますし、何より残された会社にとっても有益であり、会社の成長・発展に役立ちます。
会社に残らない場合
事業承継後、会社に残らない場合は「何でも自由にチャレンジすることが出来る人生」が待っています。
- 新しい事業を立ち上げる
- 新たな働き先を探す
- 家族との時間をゆっくり過ごす
- ボランティアや社会貢献をする
新しい人生を謳歌できるよう好きなことをしてみるのもよいことでしょう。
まとめ|事業承継の平均年齢は67~70歳!事業承継計画を立てよう!!
中小企業の経営者の平均引退年齢は67~70歳です。
このタイミングが事業承継の平均年齢とも言えるでしょう。
事業承継の準備期間として後継者育成も含めると5~10年必要だと言われています。
そこを踏まえて、事業承継の準備は遅くとも60歳からはじめるといいでしょう。
事業承継の準備における事業承継計画は、後継者と一緒に考えていくことで経営者交代しても経営が途切れることなく一貫性のある事業展開が望めます。
中期5ヵ年経営計画策定サポート「将軍の日」ではたった1日で事業承継計画を策定するお手伝いをしています。
「将軍の日」の様子はこちらからご覧ください。
後継者と共に事業承継計画を作成し、未来の事業承継のタイミングを逃すことがないようにし、会社の永続的発展をめざしましょう。
株式会社マストップは、将来こうなりたいと目指す姿に向かっている経営者と一緒に伴走していくMAS監査事業をおこなっています。
当社が提供する経営計画サポートは、「現状を把握すること」「あるべき姿(目指す姿)を明確にすること」「全社員で共有すること」を促進し、ビジョンの達成、継続的な黒字経営を実現するための課題に取り組むことを支援することです。
まずは当社の中期5ヵ年経営計画立案サポート「将軍の日」をご利用ください。
また、「このままいくと5年後どうなる?」という課題を明確にする「あんしん未来診断」も随時行っております。
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