事業承継が進まない理由は何でしょうか?
中小企業庁「経営者のための事業承継マニュアル(PDF)」では、会社の規模や業種などにもよりますが、中小企業の経営者の引退年齢は平均67~70歳であると記しています。
30年前の中小企業の経営者の引退年齢は平均61~62歳のため、経営者の引退年齢は6歳以上も上がっています。
引退年齢が上がるということは、事業承継の年齢も上がるということ。
それならば、事業承継をスムーズに進めることができれば、引退年齢も下げることが可能ですね。
本記事では、事業承継が進まない理由をランキング紹介し、事業承継をスムーズに進めるためのポイントをお伝えします。
できるだけ早く事業承継の準備に着手することで、会社の経営基盤を損なわずに事業承継をスムーズに行うことができるでしょう。
>>事業承継のタイミングを逃さないために今からできることは?
>>事業承継の平均年齢は67~70歳!事業承継のタイミングを逃さない方法

事業承継が進まない理由ランキングからみる課題
2021年版「中小企業白書」の「第2部 危機を乗り越える力 第3章:事業承継を通じた企業の成長・発展とM&Aによる経営資源の有効活用(PDF)」をみると、事業承継が進まない理由として次のような課題が挙げられています。(※複数回答のため、合計は100%になりません)
1位:事業の将来性(52.6%)
2位:後継者の経営力育成(44.0%)
3位:後継者を補佐する人材の確保(32.0%)
4位:従業員との関係維持(32.0%)
5位:近年の業績(30.7%)
6位:取引先との関係維持(27.0%)
7位:後継者を探すこと(20.8%)
8位:金融機関との調整(個人保証等)(18.9%)
9位:特になし(10.6%)
10位:後継者の了承を得ること(9.5%)
11位:その他(1.1%)
<第2-3-39図>の画像は、現経営者の事業承継に対する課題について確認したものです。
半数以上の企業において「事業の将来性」が最も多く、次いで、「後継者の経営力育成」や「後継者を補佐する人材の確保」など事業承継後の経営体制に関するものが上位となっています。
この1~3位についてもう少し詳しく見ていきましょう。
事業承継が進まない理由の第1位:事業の将来性
事業承継が進まない理由の第1位として「事業の将来性」が挙げられます。
正直、借金だらけの将来性が見えない会社の後継者になりたいなんてほとんどの方が思わないでしょう。しかし、もし借入金があったとしても将来性のある会社であれば、魅力的に感じてもらえるはずです。
では、魅力のある会社とはどんな状態を言うのでしょうか?
中小企業庁「経営者のための事業承継マニュアル(PDF)」によると、次の2つが挙げられています。
- 他者に負けない「強み」を持った会社
- 業務の流れに無駄がない、効率的な組織体制を構築した会社
自社が強みを有する分野の業務を拡大していくとともに、各部署の権限、役割を明確にして業務がスムーズに進行する事業の運営体制を整備することで、会社を磨き上げ、企業価値の高い魅力的な会社になり、事業承継しやすい土台ができることになるでしょう。
事業承継が進まない理由の第2位:後継者の経営力育成
事業承継が進まない理由の第2位として「後継者の経営力育成」が挙げられます。
後継者にいきなり経営を任せるということはトラブルのもとになります。まずは会社内での実務的な経験を積ませること、そして次期経営者として必要な実務能力、心得を習得するための教育をしっかり行うようにしましょう。
後継者の育成に必要な期間は、5~10年といわれています。
経営者の目の黒いうちに後継者の経営力育成に取り組みましょう。
実は、後継者の育成のみならず、後継者選びも重要なポイントになります。例えば、後継者は長男だからという理由で単純に決めてしまうのではなく、事業を継続・成長させていく意欲がある人を後継者に選び、育てていくことで、スムーズに事業承継が実行されていくことでしょう。
事業承継が進まない理由の第3位:後継者を補佐する人材の育成
事業承継が進まない理由の第3位として「後継者を補佐する人材の育成」が挙げられます。
実は、経営者の右腕となるような人に後継者を補佐してもらうと上手くいかない場合があります。経営者の右腕となるような人は確かに知識も経験も豊富ですが、今の経営者と共に歩んできた人なので、後継者に対して無意識に経営者と比べてしまう傾向があるため、後継者を支える役割が果たせない可能性があるからです。
後継者には後継者だけを補佐する人材の育成が望ましいでしょう。
しかしながら、後継者の育成同様、後継者を補佐する人材の育成も必要になります。ここでは後継者を補佐する人材を育てる役割に、経営者の右腕となるような人が適しているかもしれません。
>>事業承継における後継者の悩み12選!悩みが軽減する3つの行動とは?

事業承継が進まない理由は3つの承継方法によって違う!
事業承継が進まない理由は、単純な話ではなく、実は事業の承継方法によって事業承継が進まない理由に特徴があります。
まず、事業承継には3つの承継方法があります。
②役員・従業員への承継(内部昇進)
③社外への引継ぎ・M&Aなど(外部招へい)
2021年版「中小企業白書」の「第2部 危機を乗り越える力 第3章:事業承継を通じた企業の成長・発展とM&Aによる経営資源の有効活用(PDF)」によると、この3つの承継方法によって事業承継が進まない理由となる課題をみたものが、次の<第2-3-40図>となります。
承継方法別!事業承継が進まない理由①親族への承継
親族への承継(同族承継)における事業承継が進まない理由として、「後継者の経営力育成」が1位に入っています。
後継者育成は時間がかかるため、できるだけ早い段階から、経営者と後継者の二人三脚で、事業承継に向けた取り組みを始めましょう。
経営者の想い、経営理念を共有することが重要です。子や親族への事業承継は、会社の所有と経営を一体的に引き継ぎやすいため、早期の取り組みによりスムーズな事業承継が期待できます。
1位:後継者の経営力育成(55.5%)
2位:事業の将来性(52.0%)
3位:後継者を補佐する人材の確保(47.0%)
>>事業承継に娘婿はあり得ない?!後継者にできない3つの理由と解決方法

承継方法別!事業承継が進まない理由②役員・従業員への承継
役員・従業員への承継(内部昇進)における事業承継が進まない理由として、「事業の将来性」が1位に入っています。
従業員が後継者となる場合、経営者に近い場所で経営に関与してきた右腕的存在の方が事業承継するケースが多いです。
その分、会社の中身をよく知っているため、事業の将来性が厳しいとなかなか引き継いでもらえないという場合もあります。まずは、会社を磨き上げることで運用体制を整備し、事業承継しやすい状況にしましょう。
1位:事業の将来性(53.5%)
2位:後継者の経営力育成(52.5%)
3位:後継者を補佐する人材の確保(36.6%)
承継方法別!事業承継が進まない理由③社外への引継ぎ・M&Aなど
社外への引継ぎ・M&Aなど(外部招へい)における事業承継が進まない理由として、「事業の将来性」が1位に入っています。
後継者を確保できない場合、他の企業や個人といった第三者に引き継ぐこと(M&Aなど)がありますが、将来性が見えない会社を受け入れてもらうことは厳しいと言えます。
また、「近年の業績」が2位になっていることで外部招へいを検討していることが伺えます。役員・従業員への承継の場合と同様に、会社の磨き上げに取り組みをすることで、スムーズな事業承継が期待できます。
1位:事業の将来性(56.4%)
2位:近年の業績(39.2%)
3位:従業員との関係維持(36.1%)
>>事業承継と相続の違いとは?それぞれのメリットデメリットを知り理解を深めよう!

事業承継を進めるためには、事業承継計画を!
事業承継の時期はあっという間に来てしまいます。
中小企業庁「経営者のための事業承継マニュアル(PDF)」では、会社の規模や業種などにもよりますが、中小企業の経営者の引退年齢は平均67~70歳であると記しています。
ということは、中小企業の経営者は67~70歳くらいで事業承継するということです。
後継者の育成に必要な期間が5~10年とみると、遅くとも60歳くらいには事業承継の準備を計画的に行うとよいでしょう。
事業承継の準備を計画的に行うためには「事業承継計画」を作り、その計画を実行してくことが不可欠です。
「事業承継計画」の作り方の概要はこちらの記事をご覧ください。

また、「中小企業基盤整備機構」のサイトにて事業承継計画の様式がダウンロードできますので、ご活用ください。(画像は記入例です)
>>事業承継は誰に相談するといい?13の支援機関とお悩み別相談先を紹介!

まとめ|事業承継が進まない理由は、早めに計画で解決しよう!
中小企業の経営者の引退年齢は、30年前とくらべて6歳以上も上がっています。
引退年齢が上がるということは、事業承継の年齢も上がるということ。
今後の会社存続を考えれば、早めに事業承継の準備に取り掛かり、スムーズに事業承継を進めることが重要な課題となります。
事業承継が進まない理由として次のような課題が挙げられています。
(※複数回答のため、合計は100%になりません)
1位:事業の将来性(52.6%)
2位:後継者の経営力育成(44.0%)
3位:後継者を補佐する人材の確保(32.0%)
4位:従業員との関係維持(32.0%)
5位:近年の業績(30.7%)
6位:取引先との関係維持(27.0%)
7位:後継者を探すこと(20.8%)
8位:金融機関との調整(個人保証等)(18.9%)
9位:特になし(10.6%)
10位:後継者の了承を得ること(9.5%)
11位:その他(1.1%)
「事業の将来性」のため、会社を磨き上げたり、「後継者の経営力育成」のため、会社内での実務的な経験を積ませること、そして次期経営者として必要な実務能力、心得を習得するための教育をしたり、「後継者を補佐する人材の確保」のため、後継者の育成同様、後継者を補佐する人材を育成したりと事業承継には時間をかける必要があります。
後継者の育成に必要な期間が5~10年とみると、遅くとも60歳くらいには事業承継の準備を計画的に行うとよいでしょう。
事業承継の準備を計画的に行うためには「事業承継計画」を作り、その計画を実行してくことが不可欠です。
是非、早めの事業承継の準備にとりかかり、会社の経営基盤を損なわないようにスムーズな事業承継をしていきましょう。
株式会社マストップは、将来こうなりたいと目指す姿に向かっている経営者と一緒に伴走していくMAS監査事業をおこなっています。
当社が提供する経営計画サポートは、「現状を把握すること」「あるべき姿(目指す姿)を明確にすること」「全社員で共有すること」を促進し、ビジョンの達成、継続的な黒字経営を実現するための課題に取り組むことを支援することです。
まずは当社の中期5ヶ年経営計画立案サポート「将軍の日」をご利用ください。
また、「このままいくと5年後どうなる?」という課題を明確にする「あんしん未来診断」も随時行っております。
税務会計業務に長け、企業の未来をサポートすることに特化とした経営支援のエキスパートによるZoom解説で、経営者の方にわかりやすくお伝えする「あんしん未来診断」もあわせてご利用ください。