クロスSWOT分析とは、SWOT分析の「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの視点で導き出された情報を掛け合わせることで、今後の経営戦略の方向性をさらに見極めるためのフレームワークです。
SWOT分析で現状分析した後、「ではこのままクロスSWOT分析をしてみましょう!」といっても急には難しいかもしれません。
本記事では、あらかじめ作られたSWOT分析からクロスSWOT分析をしていきます。具体例を挙げていきますので、イメージをつかんでいただければ幸いです。
クロスSWOT分析で自社の持つ強みや機会を活かし、自社の弱みや脅威を克服するための戦略をみつけて、経営戦略に役立てましょう!
クロスSWOT分析とは?
クロスSWOT分析とは、SWOT分析の「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの視点で導き出された情報を掛け合わせることで、今後の経営戦略の方向性をさらに見極めるためのフレームワークです。
ということは、最初にSWOT分析ができていないとクロスSWOT分析をすることはできません。
SWOT分析で現状分析をして、そこからどういう戦略を立てれば目的を達成できるのかということを導き出していくことがクロスSWOT分析になります。
まずはじめに、SWOT分析で下表のようなマトリックスに4つの視点を整理することからしていきます。
プラス要素 | マイナス要素 | |
内部 環境 |
強み(Strengths) |
弱み(Weaknesses) |
外部 環境 |
機会(Opportunity) |
脅威(Threat) |
SWOT分析のやり方はこちらの記事をご覧ください。
実際にSWOT分析したのが下表です。
クロスSWOT分析とは、先ほどお伝えしたように、SWOT分析の「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの視点で導き出された情報を掛け合わせます。
この掛け合わせがクロスSWOT分析の4つの組み合わせになるのです。
クロスSWOT分析の4つの組み合わせ
クロスSWOT分析の4つの組み合わせは次の通りです。
- 「強み」×「機会」・・・強みと機会を最大限に活かしてできることは何か?
- 「弱み」×「機会」・・・弱みによって機会を逃さないようにできることは何か?
- 「強み」×「脅威」・・・強みを活かして脅威を克服するためにできることは何か?
- 「弱み」×「脅威」・・・弱みと脅威によって訪れる危機を回避するためにできることは何か?
図にすると次のような感じになります。
強み | 弱み | |
機会 |
強み×機会 |
弱み×機会 |
脅威 |
強み×脅威 |
弱み×脅威 |
そして、先ほどのSWOT分析をつぎのような図に置き換えます。
クロスSWOT分析の4つの組み合わせから今後の戦略を考えていきます。
クロスSWOT分析「強み(Strengths)」×「機会(Opportunity)」
SWOT分析の4つの視点のうち「強み(Strengths)」×「機会(Opportunity)」で組み合わせます。
この2つを組み合わせて見出す戦略は「強みと機会を最大限に活かしてできることは何か?」ということです。
自動車販売・板金塗装を営む会社のSWOT分析の「強み(Strengths)」×「機会(Opportunity)」から見出される戦略の事例をご覧ください。
強み | |
経営者 | ①営業力がある。 ②情報収集をしている。(同業者の集まり・個人的にも) |
人 | ③納期を伝えると自分たちで段取りして期限をしっかり守ってくれる。 ④真面目である。 ⑤スタッフ5人のうち、1人は元自動車会社の営業←接客対応を任せられるように。 |
販売 | ⑥車の利幅を低くしても、アフターケアを大切にして次に繋げる。 |
生産 | ⑦お客様のかゆい所に手が届くように。 ⑧どんな時でもすぐに行ける。 ⑨常に気配りを意識している。 |
財務 | ⑩支払いに関して現金主義にしている。 ⑪支払手形を出さない。 |
機会 | |
経営環境の変化 業界の動向 |
①板金や修理の需要が高まっている。 |
法律の改正 | ②消費税が上がる前の駆け込み ③取得税の廃止 |
同業他社の動向 | ④一般整備、板金で1~2名でしているところが、仕事ボリュームが減って廃業の可能性大。 ⑤中古車販売業が、廃業した整備・板金の会社を買い取り、内装できるようにするなど、車業界の中での組み合わせや差別化が生まれている。 |
顧客の変化 | ⑥商圏となる地域は公共交通機関が不十分のため車社会である。 ⑦軽自動車の維持費が安いので、需要がある。 |
この2つの視点から次のように「強みと機会を最大限に活かしてできることは何か?」を考えていきます。
強み①・・・営業力がある。
機会④・・・一般整備、板金で1~2名でしているところが、仕事ボリュームが減って廃業の可能性大。
【戦略】
社長の営業力により廃業の可能性が高まる先にむけてお客様を困らせないよう自社へ引き継ぐための提案をする。
強み⑥・・・車の利幅を低くしても、アフターケアを大切にして次に繋げる。
機会①・・・板金や修理の需要が高まっている。
【戦略】
車を売る利幅よりも、アフターケアや修理・板金・車検につなげることを重視し、リピーターとして長いおつきあいができるように努める。
このように「強み(Strengths)」×「機会(Opportunity)」によって見出される戦略は、新規のお客様を増やすこととリピーターを育てることを進めていき、継続的な売上確保につなげるよことになります。
クロスSWOT分析「弱み(Weaknesses)」×「機会(Opportunity)」
SWOT分析の4つの視点のうち「弱み(Weaknesses)」×「機会(Opportunity)」で組み合わせます。
この2つを組み合わせて見出す戦略は「弱みによって機会を逃さないようにできることは何か?」ということです。
自動車販売・板金塗装を営む会社のSWOT分析の「弱み(Weaknesses)」×「機会(Opportunity)」から見出される戦略の事例をご覧ください。
弱み | |
経営者 | ①営業しかできない。 ②工場のほうがわからない。 |
人 | ③営業できない。 ④職人が接客対応に弱い。 ⑤接客対応を任せられるように。元自動車会社の営業を1人雇ったが、意思決定が社長にある為、金額交渉ができない。 |
販売 | ⑥営業が自分1人なので多くのお客様周りができない。 ⑦お客様拡大が困難である。 |
生産 | ⑧特殊な整備機材が必要な車種がある。 ⑨新型に対して、機械の買換えが必要である。 |
財務 | ⑩資金力が弱い。 ⑪車両の立替がきつい。 ⑫入金に関して手形や売掛金になる。 |
機会 | |
経営環境の変化 業界の動向 |
①板金や修理の需要が高まっている。 |
法律の改正 | ②消費税が上がる前の駆け込み ③取得税の廃止 |
同業他社の動向 | ④一般整備、板金で1~2名でしているところが、仕事ボリュームが減って廃業の可能性大。 ⑤中古車販売業が、廃業した整備・板金の会社を買い取り、内装できるようにするなど、車業界の中での組み合わせや差別化が生まれている。 |
顧客の変化 | ⑥商圏となる地域は公共交通機関が不十分のため車社会である。 ⑦軽自動車の維持費が安いので、需要がある。 |
この2つの視点から次のように「弱みによって機会を逃さないようにできることは何か?」を考えていきます。
弱み④・・・職人が接客対応に弱い。
機会②・・・消費税が上がる前の駆け込み
【戦略】
職人が接客対応に弱いため、消費税が上がる前の駆け込み需要に対してチャンスを逃さないように、社長不在でも職人が接客対応できるよう今のうちから教育をする。
弱み⑨・・・新型に対して、機械の買換えが必要である。
機会⑦・・・軽自動車の維持費が安いので、需要がある。
【戦略】
新型対応の機械買換えを躊躇して軽自動車の需要のチャンスを逃さないよう設備投資による経営計画書や資金繰り表を作成して金融機関へアプローチする。
このように「弱み(Weaknesses)」×「機会(Opportunity)」によって見出される戦略は、新規のお客様を増やすことと金融機関からの融資を進めていき、継続的な売上と資金の確保につなげることになります。
クロスSWOT分析「強み(Strengths)」×「脅威(Threat)」
SWOT分析の4つの視点のうち「強み(Strengths)」×「脅威(Threat)」で組み合わせます。
この2つを組み合わせて見出す戦略は「強みを活かして脅威を克服するためにできることは何か?」ということです。
自動車販売・板金塗装を営む会社のSWOT分析の「強み(Strengths)」×「脅威(Threat)」から見出される戦略の事例をご覧ください。
強み | |
経営者 | ①営業力がある。 ②情報収集をしている。(同業者の集まり・個人的にも) |
人 | ③納期を伝えると自分たちで段取りして期限をしっかり守ってくれる。 ④真面目である。 ⑤スタッフ5人のうち、1人は元自動車会社の営業←接客対応を任せられるように。 |
販売 | ⑥車の利幅を低くしても、アフターケアを大切にして次に繋げる。 |
生産 | ⑦お客様のかゆい所に手が届くように。 ⑧どんな時でもすぐに行ける。 ⑨常に気配りを意識している。 |
財務 | ⑩支払いに関して現金主義にしている。 ⑪支払手形を出さない。 |
脅威 | |
経営環境の変化 業界の動向 |
①価格競争(安価な車検) ②保険料の改定(同じ等級でも事故の有無で違う) ③車業界の変化は激しい。20~30年後には、ガラッと変わってしまう。 |
法律の改正 | ④消費税上がった後の買い控え ⑤軽自動車の税率増。 |
同業他社の動向 | ⑥安価な車検の増加 |
顧客の変化 | ⑦ちょっとした事故だと修理しない人が増加。 ⑧車両の保有率が下がっている。 (過去30年の流れ:一家に一台→一人一台→一人数台→一人数台持たない) |
この2つの視点から次のように「強みを活かして脅威を克服するためにできることは何か?」を考えていきます。
強み⑧・・・どんな時でもすぐに行ける。
脅威①・・・価格競争(安価な車検)
【戦略】
安価な車検などの価格競争に対して、どんな時でもすぐに駆け付けるという安心感で差別化をはかり、お客様からの信頼を得るようにする。
強み⑨・・・常に気配りを意識している。
脅威⑦・・・ちょっとした事故だと修理しない人が増加。
【戦略】
ちょっとした事故だと修理しない人に対して、修理の必要性の有無や修理しないことの危険性を真摯に伝え、修理する場合は数パターンを提案し、常に気配りを意識してお客様対応をしていく。
このように「強み(Strengths)」×「脅威(Threat)」によって見出される戦略は、お客様からの信頼と実績を積み重ね、継続的な売上とリピーターの確保につなげることになります。
クロスSWOT分析「弱み(Weaknesses)」×「脅威(Threat)」
SWOT分析の4つの視点のうち「弱み(Weaknesses)」×「脅威(Threat)」で組み合わせます。
この2つを組み合わせて見出す戦略は「弱みと脅威によって訪れる危機を回避するためにできることは何か?」ということです。
自動車販売・板金塗装を営む会社のSWOT分析の「弱み(Weaknesses)」×「脅威(Threat)」から見出される戦略の事例をご覧ください。
弱み | |
経営者 | ①営業しかできない。 ②工場のほうがわからない。 |
人 | ③営業できない。 ④職人が接客対応に弱い。 ⑤接客対応を任せられるように。元自動車会社の営業を1人雇ったが、意思決定が社長にある為、金額交渉ができない。 |
販売 | ⑥営業が自分1人なので多くのお客様周りができない。 ⑦お客様拡大が困難である。 |
生産 | ⑧特殊な整備機材が必要な車種がある。 ⑨新型に対して、機械の買換えが必要である。 |
財務 | ⑩資金力が弱い。 ⑪車両の立替がきつい。 ⑫入金に関して手形や売掛金になる。 |
脅威 | |
経営環境の変化 業界の動向 |
①価格競争(安価な車検) ②保険料の改定(同じ等級でも事故の有無で違う) ③車業界の変化は激しい。20~30年後には、ガラッと変わってしまう。 |
法律の改正 | ④消費税上がった後の買い控え ⑤軽自動車の税率増。 |
同業他社の動向 | ⑥安価な車検の増加 |
顧客の変化 | ⑦ちょっとした事故だと修理しない人が増加。 ⑧車両の保有率が下がっている。 (過去30年の流れ:一家に一台→一人一台→一人数台→一人数台持たない) |
この2つの視点から次のように「弱みと脅威によって訪れる危機を回避するためにできることは何か?」を考えていきます。
弱み③・・・営業できない。
脅威⑥・・・安価な車検の増加
【戦略】
安価な車検が増加しているが、経営者以外営業スキルがないこともあり、安易に値下げして同じ土俵では戦わない。差別化して安さに惑わされない優良なお客様を獲得していく。
弱み⑪・・・車両の立替がきつい。
脅威⑧・・・車両の保有率が下がっている。
【戦略】
車両の立替が厳しい資金繰りの中、車両の保有率が下がっている時代の流れを受け止め、車両販売に頼らない経営をめざす。
このように「弱み(Weaknesses)」×「脅威(Threat)」によって見出される戦略は、安価な車検の流行に流されず、車両の保有率の低下という時代にあわせた経営をめざすことになります。
クロスSWOT分析から今後の戦略がみえてくる!
クロスSWOT分析から今後の戦略がみえてきます。
実際にSWOT分析の4つの視点を組み合わせることで、見出した戦略がこちらです。
・・・強みと機会を最大限に活かしてできることは何か?
【戦略】
- 社長の営業力により廃業の可能性が高まる先にむけてお客様を困らせないよう自社へ引き継ぐための提案をする
- 車を売る利幅よりも、アフターケアや修理・板金・車検につなげることを重視し、リピーターとして長いおつきあいができるように努める。
・・・弱みによって機会を逃さないようにできることは何か?
【戦略】
- 職人が接客対応に弱いため、消費税が上がる前の駆け込み需要に対してチャンスを逃さないように、社長不在でも職人が接客対応できるよう今のうちから教育をする。
- 新型対応の機械買換えを躊躇して軽自動車の需要のチャンスを逃さないよう設備投資による経営計画書や資金繰り表を作成して金融機関へアプローチする。
・・・強みを活かして脅威を克服するためにできることは何か?
【戦略】
- 安価な車検などの価格競争に対して、どんな時でもすぐに駆け付けるという安心感で差別化をはかり、お客様からの信頼を得るようにする。
- ちょっとした事故だと修理しない人に対して、修理の必要性の有無や修理しないことの危険性を真摯に伝え、修理する場合は数パターンを提案し、常に気配りを意識してお客様対応をしていく。
・・・弱みと脅威によって訪れる危機を回避するためにできることは何か?
【戦略】
- 安価な車検が増加しているが、経営者以外営業スキルがないこともあり、安易に値下げして同じ土俵では戦わない。差別化して安さに惑わされない優良なお客様を獲得していく。
- 車両の立替が厳しい資金繰りの中、車両の保有率が下がっている時代の流れを受け止め、車両販売に頼らない経営をめざす。
今回、事例で挙げさせていただいたSWOT分析は、数年前にある経営者の方から「売上が上がってきているのにお金がないんだよね」という一言から始まりました。
「売上を上げたい!資金繰りをなんとかしたい!」
ということで、まずは現状分析のためSWOT分析をしました。
そして、SWOT分析からクロスSWOT分析をしていく中で「目的意識を持つこと」により考え出された情報に一貫性を持たせるようにしました。
何のためにするのか?という目的意識を持つことでこのような戦略が見いだせるのです。
まとめ|クロスSWOT分析で経営戦略を描いていこう!
クロスSWOT分析とは、SWOT分析の「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの視点で導き出された情報を掛け合わせることで、今後の経営戦略の方向性をさらに見極めるためのフレームワークです。
ということは、最初にSWOT分析ができていないとクロスSWOT分析をすることはできません。
SWOT分析で現状把握して、そこからどういうことをしていけば目的を達成できるのかということを引き出していくことがクロスSWOT分析なのです。
クロスSWOT分析の4つの組み合わせは次の通りです。
- 「強み」×「機会」・・・強みと機会を最大限に活かしてできることは何か?
- 「弱み」×「機会」・・・弱みによって機会を逃さないようにできることは何か?
- 「強み」×「脅威」・・・強みを活かして脅威を克服するためにできることは何か?
- 「弱み」×「脅威」・・・弱みと脅威によって訪れる危機を回避するためにできることは何か?
クロスSWOT分析をする際は、SWOT分析と同じように、何のためにするのか?という目的意識を持つことで今後の戦略が見いだすことができます。
クロスSWOT分析で自社の持つ強みや機会を活かし、自社の弱みや脅威を克服するための戦略をみつけて、経営戦略に役立てましょう!