「決算書を出してください」
このように金融機関等から言われたら、どこまで提出すればいいのでしょうか?
そもそも決算書とは、どんなものが含まれているのでしょうか?
「なんとなくわかるようで、ちょっと迷う・・・」
そんなあなたのために、金融機関等に求められた場合、決算書とはどこまで出せばいいのか?そもそも決算書とはどのようなものをいうのか?などをお伝えいたします。
決算書はどこまで提出するの?
金融機関から決算書を求められたときはどこまで提出するとよいのでしょうか?
ここでは、決算書について簡単に解説し、金融機関や取引先に決算書を求められたときにどこまで提出すればよいかお伝えします。
決算書とは?
決算書とは、企業の特定の期間における財務状況や業績を示す報告書のことです。
主な決算書には、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表などが含まれます(キャッシュフロー計算書の作成義務は上場企業のみ)。
決算書は、経営者や株主、金融機関、取引先など、企業の財務情報を必要とする関係者に対して、会計基準に則って作成し、開示されます。
金融機関にはどこまで出せばいい?
金融機関への決算書の提出範囲は、一般的には申告書も含めた決算書一式のことを言います。
【法人の場合】
- 決算書
- 法人税申告書(別表を含む)
- 勘定科目内訳明細書
- 法人事業概況説明書
- 消費税申告書
- 地方税申告書
- 税務代理権限証書(税理士が関与している場合)
- メール詳細(電子申告している場合)
【個人事業者の場合】
- 所得税の確定申告書
- 収支内訳書(白色申告の場合)
- 青色申告決算書(青色申告の場合)
- 消費税の確定申告書
- 税務代理権限証書(税理士が関与している場合)
- メール詳細(電子申告している場合)
金融機関は、融資の審査や信用評価のために、決算書一式の情報を必要とします。
したがって、金融機関に「決算書を出してください」と言われたら、上記の書類を提出すればよいでしょう。
ただし、金融機関との取引によって提出範囲が異なる場合がありますので、その場合は具体的な要求に合わせて提出する必要があります。
取引先に求められたら?
取引先から決算書を求められることもあります。
例えば、新しい取引先として、信頼性の確保や取引リスクの評価のために決算書を求められることもあるでしょう。
具体的な提出範囲は、取引先や業種によって異なりますが、貸借対照表や損益計算書が一般的に要求されます。
したがって、取引先からの要求に合わせて提出できる範囲で提出しましょう。
決算書の種類
ここからは、決算書の種類をお伝えしていきます。
どの決算書がどんなことを読み解くためのものなのか知っておきましょう。
①貸借対照表
貸借対照表は「ある時点における企業の財政状態」を表します。
貸借対照表は「資産の部」「負債の部」「純資産の部」と大きく3つにわけることができます。
「資産の部」は資金の運用形態を表し、どこにお金が使われたかを示しています。
「負債の部」と「純資産の部」は資金の調達源泉を表し、どこからお金が入ってきたかを示しています。
その中でも「負債の部」はいつか返さなくてはならない「他人資本」といいます。「純資産の部」は返さなくてもいい「自己資本」といいます。
こちらの記事で、貸借対照表の見方を詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。
>>貸借対照表の見方!初心者でもわかりやすい健康診断で例えます!!
②損益計算書
損益計算書は「一定期間の企業活動の経営成績」です。
次の5つの利益は注目しておきましょう。
- 売上総利益(うりあげそうりえき)
- 営業利益(えいぎょうりえき)
- 経常利益(けいじょうりえき)
- 税引前当期純利益(ぜいびきまえとうきじゅんりえき)
- 当期純利益(とうきじゅんりえき)
損益計算書をみれば「いくら売れているのか?」「儲けはどれだけあるのか?」がわかります。
しかし、損益計算書をそれだけにしか使わないのはもったいないです。
損益計算書の見方がわかれば「今月はあとどのくらい売ったらいいのか?」「割引したらどうなのか?」など簡単に予測することもできます。
こちらの記事で、損益計算書の見方を詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。
>>損益計算書の見方!初心者がみるべき5つの利益と赤字にしない為には?
③キャッシュフロー計算書
キャッシュフロー計算書は「一定の期間におけるお金の流れを表すもの」です(上場している企業が作成するので、ほとんどの中小企業は作成不要です)。
「営業活動によるキャッシュフロー」「投資活動によるキャッシュフロー」「財務活動によるキャッシュフロー」の3つのキャッシュフローからできています。
- 営業活動によるキャッシュフロー
→会社の本業である営業活動で稼いだお金 - 投資活動によるキャッシュフロー
→将来に向けて投資、または過去の投資を売却したお金 - 財務活動によるキャッシュフロー
→企業の財務に関する資金調達、または返済したお金
キャッシュフロー計算書をみれば、「企業の資金がなぜ足りなくなったのか?」「儲けたお金はどこに流れたのか?」といったお金の流れがわかるようになります。
こちらの記事で、キャッシュフロー計算書の見方を詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。
>>キャッシュフロー計算書の見方!ポイント3つをおさえて分析しよう!
④株主資本等変動計算書
株主資本等変動計算書は、「企業の株主資本に関連する変動を示すもの」です。
この計算書は、次のように、特定期間内における株主資本に関連する出来事や取引の内容を記載します。
- 新株の発行と増資
- 自己株式の取得と減資
- 利益配当と剰余金の取扱い
株主資本等変動計算書は、企業の株主資本の変動を把握する上で重要な情報源となります。
株主資本の変動は、企業の資金調達や資本構造に影響を及ぼすため、投資家や経営者、金融機関などが企業の健全性を判断する際に参考となります。
⑤個別注記表
個別注記表は、「企業の決算書に含まれる数字や項目について補足情報を提供するもの」です。
通常の決算書の数字だけでは情報が不十分である場合、特定の項目や取引に関する詳細な説明や補足情報が必要となります。
こうした情報を提供するために、個別注記表が利用されます。
個別注記表は、主に次のような内容が書かれています。
- 資産の評価方法
- 会計処理の方針
- 重要な取引の内容
- その他の補足情報
企業の財務情報を評価する際には、個別注記表の情報を適切に理解し、決算書全体の情報を総合的に判断することが重要です。
⑥計算書類の付属明細書
計算書類の付属明細書は、「企業の決算書に含まれる数字の詳細な計算過程や補足情報を提供するもの」です。
通常の決算書では数字だけでは情報が不十分である場合、特定の項目や取引に関する具体的な計算方法や裏付け情報が必要となります。
こうした情報を提供するために、計算書類の付属明細書が利用されます。
例えば、固定資産減価償却内訳明細書、監査報告書、取締役会議事録などが挙げられます。
⑦法人事業概況説明書
法人事業概況説明書は、「企業の業績、事業内容、経営の成果や課題などを説明するもの」です。
決算書だけでは伝えきれない企業の背景情報や将来の展望を提供するための重要な報告書となります。
法人事業概況説明書は、投資家や金融機関、取引先などの関係者に対して、企業の経営状況や戦略を理解する上で重要な情報源となります。
特に投資判断や信用評価を行う際には、決算書とともに法人事業概況説明書を総合的に読み解くことが求められます。
①~⑦の決算書や付属明細書は、企業の財務情報を評価し、分析するために非常に重要です。
それぞれの情報を適切に理解し、組み合わせて分析することで、より全体像を把握することができます。
決算書の主な4つの役割
決算書は、企業の財務状況や業績を評価し、分析するために非常に重要です。
決算書が欲しいという金融機関や取引先はどのような視点で決算書を見ていくのでしょうか?
ここでは、決算書の主な役割を4つ紹介いたします。
役割①財務状況の把握
決算書の役割の一つ目は、財務状況の把握です。
企業の財務状況を把握するのには、貸借対照表が役立ちます。
貸借対照表で、企業の特定時点における資産、負債、純資産のバランスを確認し、企業の経済的な健全性を把握することができます。
例えば、資産がどれだけあるか、それを支えるための負債や純資産はどうなっているかを知ることで、企業の債務を返済する能力や、経営の安定性を評価できます。
役割②収益と費用の評価
決算書の役割の二つ目は、収益と費用の評価です。
企業の業績を評価する上で重要な指標としてみるには、損益計算書が役立ちます。
損益計算書は、企業の特定期間(通常は1年間)における収益と費用を示します。売上高、営業費用、税金などの項目が含まれます。
例えば、収益、費用が増加しているか減少しているかを把握し、利益率や収益性を評価することで、企業の成長性や収益の安定性を把握できます。
役割③キャッシュフローの管理
決算書の役割の三つ目は、キャッシュフローの管理です。
キャッシュフローの管理やキャッシュフローの健全性を評価するのには、キャッシュフロー計算書が役立ちます。
キャッシュフロー計算書は、特定期間における現金の収入と支出を示します。この計算書では、営業活動、投資活動、財務活動の3つのカテゴリに現金の動きを分類します。
企業の現金の流れを正確に把握することで、資金の適切な管理や投資活動の評価が可能となります。また、現金の安定性やキャッシュフローの健全性を確認することで、企業の運営の安定性を評価できます。
役割④意思決定のサポート
決算書の役割の四つ目は、意思決定のサポートです。
決算書は、経営者、投資家、金融機関、取引先など、関係者が意思決定を行う際に非常に重要です。
決算書を通じて企業の健全性や業績を客観的に評価し、経営上の戦略や投資判断に役立てることができるからです。
また、決算書を前期比較したり、異なる時期の財務情報を分析することで、長期的な成長戦略を構築したり、課題を特定して改善策を講じるのに役立ちます。
まとめ|決算書とは?どこまで出せばいいか知っておこう!
ここまで、金融機関等に決算書を求められた場合、決算書とはどこまで出せばいいのか?そもそも決算書とはどのようなものをいうのか?などをお伝えしてきました。
金融機関への決算書の提出範囲は、一般的には申告書も含めた決算書一式のことを言います。
【法人の場合】
- 決算書
- 法人税申告書(別表を含む)
- 勘定科目明細書
- 法人事業概況説明書
- 消費税申告書
- 地方税申告書
- 税務代理権限証書(税理士が関与している場合)
【個人事業者の場合】
- 所得税の確定申告書
- 収支内訳書(白色申告の場合)
- 青色申告決算書(青色申告の場合)
- 消費税の確定申告書
- 税務代理権限証書(税理士が関与している場合)
金融機関に「決算書を出してください」と言われたら、上記の書類を提出すればよいでしょう。
ただし、金融機関との取引によって提出範囲が異なる場合がありますので、その場合は具体的な要求に合わせて提出する必要があります。
また、決算書の中身や役割を理解し、金融機関から決算書に関する質問がきても経営者の言葉で説明できるようにしましょう。
そうすることで、金融機関からの信頼度が増し、より良い関係ができるようになるでしょう。
株式会社マストップは、将来こうなりたいと目指す姿に向かっている経営者と一緒に伴走していくMAS監査事業をおこなっています。
当社が提供する経営計画サポートは、「現状を把握すること」「あるべき姿(目指す姿)を明確にすること」「全社員で共有すること」を促進し、ビジョンの達成、継続的な黒字経営を実現するための課題に取り組むことを支援することです。
まずは当社の中期5ヵ年経営計画立案サポート「将軍の日」をご利用ください。
また、「このままいくと5年後どうなる?」という課題を明確にする「あんしん未来診断」も随時行っております。
税務会計業務に長け、企業の未来をサポートすることに特化とした経営支援のエキスパートによるZoom解説で、経営者の方にわかりやすくお伝えする「あんしん未来診断」もあわせてご利用ください。