「利益が減ってきたから、人件費を削減するしかない」そう考えていませんか?
確かに、人件費は会社の支出の中でも大きな割合を占めるため、真っ先に見直したくなる項目です。しかし、人件費を安易に削減すると、優秀な社員の離職や生産性の低下を招き、かえって利益が減ってしまうことも少なくありません。
この記事では、なぜ「駄目な経営者ほど人件費を削減する」と言われるのか、その理由や人件費削減が会社に与える影響、人件費を削らずに利益を伸ばすための考え方をお伝えします。
なぜ「駄目な経営者ほど人件費を削減する」と言われるのか

会社の利益が減ると、多くの経営者は「まずは経費を削減しよう」と考えます。その中でも人件費は支出の割合が大きいため、最初に見直しの対象になりがちです。
ここでは、なぜ「駄目な経営者ほど人件費を削減する」と言われるのか、その理由を3つに分けて解説します。
人件費を「コスト」としか考えていない
駄目な経営者と言われる人の多くは、人件費を「できるだけ減らしたいコスト」としか考えていません。
確かに、人件費は会社の支出の中でも大きな割合を占めるため、削減すれば短期的には利益が改善したように見えます。しかし、社員は会社の利益を生み出す大切な存在です。営業活動・製造・接客など、すべての仕事は人が担っています。そのため、人件費だけを削ると、売上やサービス品質の低下につながり、結果として利益まで減少することがあります。
人件費は削るべき経費ではなく、利益を生み出すための「投資」という視点を持つことが大切です。
利益が減ると真っ先に人件費へ手を付けてしまう
利益が減少すると、「人件費を削ればすぐに利益が改善する」と考える経営者は少なくありません。
人件費は毎月必ず発生するため、削減効果が数字に表れやすいからです。しかし、これは目先の利益だけを見た判断です。本来であれば、利益率の低い商品やサービス・不要な固定費・赤字取引などを先に見直すべきです。
このような根本的な問題を放置したまま人件費だけを削減すると、社員の負担が増え、生産性やモチベーションが低下します。その結果、さらに利益が減るという悪循環に陥ってしまうのです。
経営計画がなく、その場しのぎの経営判断になっている
人件費を安易に削減してしまう会社には、中長期の経営計画がないという共通点があります。
利益が減るたびに場当たり的な対応を繰り返しているため、「今月を乗り切ること」が最優先になってしまうのです。しかし、経営計画があれば、売上や利益の目標をもとに、どのような改善が必要なのかを冷静に判断できます。
人件費に手を付ける前に、利益率の改善・業務効率化・価格の見直しなど、他の選択肢を検討することも可能です。会社を成長させる経営者は、その場の数字ではなく、将来を見据えて意思決定を行っています。
人件費を削減すると会社はどうなる?経営に起こる5つの悪影響

人件費を削減すると、一時的には利益が増えたように見えるかもしれません。しかし、人件費は社員の働きや会社の成長を支える重要な投資でもあります。そのため、安易な削減は会社全体に大きな影響を及ぼします。
ここでは、人件費を削減した会社で起こりやすい5つの悪影響を紹介します。
優秀な社員から辞めていく
人件費削減によって給与や賞与が減ったり、残業代がカットされたりすると、最初に動くのは優秀な社員です。
能力が高い人ほど転職先を見つけやすく、「この会社では将来が不安だ」と感じると早く行動します。一方で、残る社員には仕事の負担が増え、さらに不満が高まります。その結果、退職が続き、人材不足が深刻化することもあります。
一度辞めた優秀な人材を採用・育成するには、多くの時間と費用がかかります。人件費を削減したつもりが、結果的に会社に大きな損失を与えてしまうのです。
社員のモチベーションと生産性が低下する
人件費の削減は、社員の働く意欲にも大きな影響を与えます。「頑張っても給与が上がらない」「会社は社員を大切にしていない」と感じると、仕事への意欲は自然と低下します。
人員削減によって一人当たりの仕事量が増えれば、疲労やストレスも大きくなります。その結果、ミスが増えたり、業務効率が悪くなったりして、生産性が下がることも少なくありません。
人件費を減らしても、一人ひとりが生み出す利益まで減ってしまえば、本来の目的である利益改善にはつながらないのです。
採用力が低下し、人材不足が深刻化する
人件費を削減し続ける会社は、求職者からも魅力が低い会社として見られやすくなります。給与水準が低かったり、社員の離職が多かったりすると、「働きにくい会社ではないか」と不安を持たれてしまうからです。
現在は口コミサイトやSNSで企業の評判が広まりやすく、採用活動にも大きく影響します。その結果、応募者が集まらず、採用できてもすぐに辞めてしまうという悪循環に陥ることがあります。
人材不足は既存社員の負担をさらに増やし、会社全体の成長を妨げる原因になります。
商品・サービスの品質が低下し、顧客離れにつながる
人件費を削減すると、人手不足や教育不足が起こりやすくなります。その結果、接客の質が落ちたり、製品のミスや納期遅れが増えたりするなど、商品・サービスの品質に影響が出ることがあります。
顧客は品質や対応に不満を感じると、他社へ乗り換えてしまいます。一度失った顧客を取り戻すことは簡単ではありません。
人件費を削ることで短期的な利益は改善しても、長期的には売上を支える顧客を失い、会社の信頼まで低下してしまう可能性があります。
売上・利益がさらに減少し、負のスパイラルに陥る
人件費を削減すると、人材流出・生産性の低下・品質の低下が次々と起こり、最終的には売上や利益まで減少してしまいます。
利益が減ると、さらに人件費を削減するという判断を繰り返し、会社は負のスパイラルに陥ります。この状態になると、経営を立て直すことは簡単ではありません。
本来、利益を増やすためには、人件費を削るのではなく、利益率の改善や付加価値の向上など、利益が残る仕組みをつくることが重要です。短期的なコスト削減ではなく、長期的な視点で経営を考えることが会社を成長させる第一歩になります。
人件費削減が必要になる会社の共通点

人件費を削減しなければならない会社には、いくつかの共通点があります。多くの場合、問題は人件費そのものではなく、利益が残らない経営の仕組みにあるのです。
ここでは、人件費削減が必要になる会社の共通点を4つ紹介します。
利益率の低い商品・サービスを売り続けている
売上が伸びていても、利益率の低い商品やサービスばかり販売していては、会社には利益が残りません。
価格を安く設定しすぎていたり、手間ばかりかかる仕事を受け続けていたりすると、忙しいのに利益が出ない状態になります。このような状況では、利益不足を補うために人件費削減を考えてしまいがちです。
しかし、本当に見直すべきなのは人件費ではなく、商品やサービスごとの採算です。利益率を把握し、利益を生み出せない商品やサービスを改善することが、根本的な解決につながります。
値引きや価格競争で利益を失っている
受注を増やすために値引きを繰り返したり、競合他社との価格競争に巻き込まれたりすると、売上はあっても利益が残りにくくなります。
一件ごとの利益が少なければ、同じ利益を確保するためには、より多くの仕事をこなさなければなりません。その結果、社員の負担が増え、人件費だけが重く感じられるようになります。
本来は、価格ではなく品質やサービスなど、自社ならではの価値で選ばれる会社を目指すことが重要です。安売りに頼らない経営こそが、人件費を削らず利益を増やす近道になります。
固定費や間接コストを見直していない
人件費に手を付ける前に見直すべきなのが、毎月発生する固定費や間接コストです。
たとえば、使っていないサブスク・割高な通信費・不要なリース契約・利用していない設備などは、気づかないうちに利益を圧迫していることがあります。しかし、このようなコストを見直さず、人件費だけを削減してしまう会社は少なくありません。
人件費は一度削減すると社員や組織への影響が大きいため、まずは会社の利益に影響を与えにくい固定費から見直すことが重要です。
利益を管理する経営計画がない
人件費削減を繰り返す会社には、利益を計画的に管理する仕組みがないケースが多く見られます。
売上だけを追いかけ、「利益がどれくらい必要なのか」「どの商品で利益を出すのか」といった目標が明確になっていないため、利益が減るたびに場当たり的な対応をしてしまいます。その結果、最も削減しやすい人件費に頼る経営になってしまうのです。
経営計画を作成し、利益目標や改善策を数字で管理することで、人件費に頼らず利益を確保できる経営へと変えていくことができます。
人件費を削減する前に経営者が取り組むべき5つの改善策

利益が減ってきたからといって、すぐに人件費を削減するのはおすすめできません。人件費は会社の利益を生み出す社員への投資でもあるため、安易に削減すると会社の成長力まで失ってしまう可能性があります。
ここでは、人件費を削減する前に経営者が取り組むべき5つの改善策を紹介します。
利益率の低い商品・サービスを見直す
利益を増やすためには、売上ではなく利益率に目を向けることが重要です。売れている商品やサービスでも、利益がほとんど残っていなければ、会社の利益には貢献していません。
まずは商品やサービスごとの利益率を把握し、採算が取れているかを確認しましょう。利益率が低いものは価格を見直したり、内容を改善したり、場合によっては販売を終了する判断も必要です。
利益を生まない商品を続けるよりも、利益が残る商品に経営資源を集中させることが、会社全体の利益改善につながります。
値引き・赤字取引を減らして利益率を改善する
利益が残らない原因の一つが、安易な値引きや赤字取引です。「仕事を失いたくない」という理由で値引きを続けると、売上は増えても利益は減ってしまいます。
利益の少ない仕事を数多く受けるほど、社員の負担だけが増えることにもなります。まずは値引きのルールを見直し、本当に必要な場合だけ行うようにしましょう。
顧客ごとの採算を確認し、利益が出ていない取引は条件の見直しを検討することも大切です。利益率を改善することが、人件費を削らず利益を増やす第一歩になります。
家賃・通信費・サブスクなど固定費を見直す
固定費は、一度見直すだけで継続的なコスト削減につながる項目です。
たとえば、使っていないサブスク・ソフトウェア・契約内容が古い通信費・必要以上に広いオフィスなどは、知らないうちに利益を圧迫していることがあります。このような固定費は、社員への影響が少なく見直せるため、人件費よりも優先して改善したい項目です。
毎月発生するコストを少しずつ削減するだけでも、年間では大きな金額になります。まずは固定費を一覧にし、本当に必要な支出かを確認してみましょう。
業務改善・DXで生産性を高める
人件費を削るのではなく、一人ひとりが生み出す利益を増やすことが重要です。そのためには、業務改善やDX(デジタルトランスフォーメーション)を進め、生産性を高めることが欠かせません。
たとえば、紙の書類を電子化したり、定型業務を自動化したりすることで、社員はより付加価値の高い仕事に集中できるようになります。人を減らすのではなく、仕事のやり方を変えることが利益改善の近道です。
社員の負担を減らしながら利益を増やせる仕組みづくりを目指しましょう。
経営計画を作り、利益が残る仕組みをつくる
人件費削減を繰り返さないためには、利益が残る仕組みを作ることが最も重要です。そのために必要なのが、経営計画です。
経営計画があれば、「どれくらいの利益を目指すのか」「そのために売上や利益率をどう改善するのか」を数字で管理できるようになります。利益が減ったときも、その場しのぎで人件費を削るのではなく、計画に沿って適切な改善策を実行できます。
会社を長く成長させるためには、人件費を削る経営ではなく、利益を計画的に生み出す経営へ転換することが大切です。
人件費を減らさず利益を伸ばす会社の共通点

利益を伸ばしている会社は、人件費を削ることで利益を確保しているわけではありません。むしろ、社員がより大きな価値を生み出せる環境を整え、利益を増やす仕組みづくりに力を入れています。
ここでは、人件費を減らさず利益を伸ばす会社の共通点を4つ紹介します。
人件費を「費用」ではなく「投資」と考えている
利益を伸ばしている会社は、人件費を単なる費用ではなく、利益を生み出すための投資と考えています。社員の教育やスキルアップに時間やお金をかけることで、生産性が向上し、より大きな利益を生み出せるようになるからです。
反対に、人件費を削ることばかり考える会社は、人材育成がおろそかになり、会社全体の成長も止まってしまいます。
人は会社にとって最も重要な経営資源です。短期的なコストだけを見るのではなく、将来の利益につながる投資という視点を持つことが、持続的な成長につながります。
売上ではなく付加価値と利益率を重視している
利益を伸ばしている会社は、「売上を増やすこと」よりも「利益を増やすこと」を重視しています。そのため、価格競争で仕事を増やすのではなく、自社ならではの強み・品質・サービスによって付加価値を高めています。
付加価値が高まれば、価格だけで比較されにくくなり、適正な利益を確保できるようになります。利益率の高い商品やサービスに力を入れることで、同じ売上でもより多くの利益を残せます。
忙しいのに利益が出ない会社ほど、売上ではなく利益率に目を向けることが大切です。
一人当たりの生産性を高めて利益を増やしている
利益を伸ばしている会社は、社員を減らすのではなく、一人当たりが生み出す利益を増やす工夫をしています。
たとえば、業務のムダをなくしたり、DXを活用して作業時間を短縮したりすることで、同じ人数でもより多くの価値を生み出せるようになります。社員が付加価値の高い仕事に集中できる環境を整えることも重要です。
人件費を削減するよりも、生産性を高める方が、社員の働きがいや会社の利益向上につながります。人を減らす経営ではなく、人を活かす経営こそが会社を成長させるポイントです。
中長期の経営計画に基づいて意思決定をしている
利益を伸ばしている会社には、将来を見据えた中長期の経営計画があります。
「3年後、5年後にどのような会社を目指すのか」という目標が明確だからこそ、目先の利益だけで判断することがありません。一時的に利益が減っても、人材育成や設備投資など、将来の成長につながる投資は継続します。
一方、経営計画がない会社は、その場の数字だけを見て人件費を削減し、結果的に会社の成長力を失ってしまいます。利益を伸ばし続けるためには、長期的な視点で経営判断を行うことが欠かせません。
「駄目な経営者ほど人件費を削減する」に関するよくある質問

ここでは、「駄目な経営者ほど人件費を削減する」に関するよくある質問を紹介します。
Q1.赤字なら人件費を削るしか方法はありませんか?
A1.いいえ、赤字だからといって、すぐに人件費を削る必要はありません。
まずは赤字の原因を把握し、利益率の低い商品・サービス・値引き販売・不要な固定費などを見直すことが優先です。これらを改善するだけで利益が回復するケースも少なくありません。
ただし、会社の存続が危ぶまれるほど資金繰りが悪化している場合には、人件費を含めたコスト全体を見直す必要があります。その際も、人件費だけに頼るのではなく、経営改善計画を立てたうえで慎重に判断することが大切です。
Q2.人件費率はどれくらいが適正ですか?
A2.人件費率に「これが正解」という数字はありません。業種やビジネスモデルによって適正な水準は大きく異なるためです。
(目安は業種による)
(だいたい30%から40%台が目安とはいわれています)
製造業とサービス業では、人件費率は違います。そのため、人件費率だけで会社の良し悪しを判断することはできません。重要なのは、人件費に見合う利益を生み出せているかどうかです。
人件費率だけを見るのではなく、粗利率・営業利益率・一人当たりの粗利益などもあわせて確認し、会社全体の収益性を判断することが重要です。
Q3.人件費を増やしても利益は残せますか?
A3.はい、利益を残すことは可能です。
実際に業績の良い会社ほど、人材育成や採用に積極的に投資しているケースが多くあります。重要なのは、人件費を増やすことではなく、人件費以上の付加価値を生み出せる仕組みをつくることです。
たとえば、教育によって社員のスキルが向上すれば、生産性や顧客満足度が高まり、利益も増えやすくなります。人件費を「コスト」と考えるのではなく、「利益を生み出す投資」と捉えることが、会社を成長させるポイントです。
Q4.人件費を見直す必要があるのはどんなときですか?
A4.人件費の見直しが必要になるのは、人件費そのものが問題なのではなく、会社の利益や資金繰りとのバランスが崩れているときです。
たとえば、売上が大幅に減少している場合や、業務量に対して人員が過剰な場合には、人員配置や働き方を見直す必要があります。ただし、給与を下げたり人員を減らしたりする前に、利益率の改善・固定費の削減・業務効率化など、他の改善策を検討することが重要です。
人件費の見直しは、あくまでも最後の選択肢として考えるようにしましょう。
まとめ|利益を残す経営者は、人件費ではなく「利益が出る仕組み」を見直している

人件費は会社にとって大きな支出ですが、利益を生み出すために欠かせない「投資」でもあります。
利益が減ったからといって安易に人件費を削減すると、人材流出・生産性の低下・顧客離れなどを招き、結果として会社の利益まで失ってしまう可能性があります。
本当に見直すべきなのは、人件費ではなく利益が出る仕組みです。利益率の改善・固定費の見直し・業務効率化・中長期の経営計画を立てることで、人件費を削らなくても利益を伸ばせる会社を目指せます。
中期5ヵ年経営計画立案セミナー「将軍の日」では、自社の現状を数字で分析し、利益が残る経営の仕組みを考えながら、5年後の会社の未来を描く経営計画を作成します。
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