「黒字なのに、お金がない?」
こんな疑問を感じたことはありませんか?
売上があるのに、いつも資金が足りない。新たな投資に踏み出せない。そんな状況に心当たりがあるなら、それは「資金繰りの危機」かもしれません。実は、会社にお金が残らないのには共通した原因があります。
本記事では、お金がない会社にありがちな5つの特徴から、黒字倒産のリスク、資金繰り改善の具体策、緊急時の資金調達法までを丁寧に解説します。
経営に不安を感じている今こそ、資金の流れを見直すチャンスです。
お金がない会社に共通する5つの特徴とは?
「うちは黒字なのに、なぜかお金がない」
そんな悩みを抱える経営者の方は少なくありません。実は、会社にお金が残らないのには、共通する特徴があります。
ここでは、資金繰りが厳しい会社に見られる代表的な5つの特徴をご紹介します。
特徴①回収できていない売掛金が多い
売上はあるのに現金が足りない。そんなときにまず疑いたいのが「売掛金の未回収」です。
売掛金とは、商品やサービスを提供した後にまだお金を受け取っていない状態のこと。取引先からの入金が遅れると、その分だけ資金が止まってしまい、経営を圧迫します。
例えば、100万円分の商品を納品しても、3か月後にしか入金されないとなれば、その間の運転資金は自社でまかなわなければなりません。売上が増えるほど資金が苦しくなるという逆転現象が起こるのです。
特徴②在庫が過剰で資金が滞留している
「商品が売れれば回収できるから」と考えて在庫をたくさん抱えるのも危険です。
売れていない在庫は、現金が倉庫に眠っている状態と同じです。仕入れや製造に使ったお金が回収できていないので、その分だけ資金が動かなくなります。
しかも在庫は、時間とともに価値が下がるリスクもあります。流行遅れになったり、傷んだりすると、結局は値引き販売や廃棄になってしまい、損失にもつながりかねません。
特徴③利益率が低く売上に対して稼げていない
「売上はあるのに、なぜか利益が出ない」そんな会社は注意が必要です。
売上がどれだけあっても、仕入れや経費で消えてしまえば手元にお金は残りません。特に、利益率(売上に対してどれだけ利益があるか)が低いと、たくさん売っても思ったほど資金が増えないのです。
例えば、1,000万円売っても利益が10万円しかないなら、少しでも経費がかさむと赤字に転落してしまいます。売上だけでなく「どれだけ残せているか」に目を向けることが重要です。
特徴④入金と支払いのタイミングがズレている
資金繰りが苦しい会社の多くは、「入ってくるお金」と「出ていくお金」のタイミングが合っていません。
例えば、仕入れ代金は月末に支払わなければならないのに、売上の入金が翌月の15日というようなズレがあると、一時的にお金が足りなくなってしまいます。
資金繰りの基本は、「先に出ていくお金をどうやってカバーするか」です。支払いの期日を交渉したり、入金サイクルを短くしたりする工夫が求められます。
特徴⑤設備投資や借入返済でキャッシュが圧迫されている
新しい機械の購入や店舗拡大などの設備投資は、将来的には利益を生むかもしれませんが、短期的には多額の現金が必要です。また、過去に借りたお金の返済も、毎月のキャッシュフローを圧迫します。
とくに注意が必要なのは「見込み」に頼った投資や、「なんとかなるだろう」で借りた資金の返済です。今あるお金の流れを無視して動いてしまうと、どんなに事業がうまくいっていても、資金がショートしてしまうことがあります。
黒字でも安心できない?黒字倒産の危険
「うちは黒字だから安心だ」と思っていませんか?
実は、会計上は黒字でも、現金が足りずに会社が倒産してしまうケースがあります。これが「黒字倒産」と呼ばれる現象です。
ここでは黒字倒産の仕組みと、経営者が知っておくべきポイントを解説します。
黒字倒産とは?
黒字倒産とは、帳簿上の「利益」が出ているにもかかわらず、手元に現金がなくなってしまい、支払いができなくなることで倒産に追い込まれるケースを指します。
例えば、決算書上では100万円の利益が出ていても、実際には仕入れ代金や家賃、給料などの支払いに現金が足りない場合です。もしそんな状態に陥ってしまうと、事業を継続することができません。
つまり、「利益がある=安全」とは限らないのです。経営者にとって大切なのは「いま、手元に使える現金がどれだけあるか」という視点です。
「利益」と「現金」はまったく別物
「利益が出てるのに、なんでお金がないの?」と感じる方は多いですが、利益と現金は全くの別物です。
利益とは、売上から経費などを差し引いた「計算上の数字」で、実際のお金の動きとはズレがあります。一方で、現金は「いま手元にあるお金」です。入金の遅れや在庫の滞留、借入金の返済、設備投資などで現金が先に出て行くと、利益が出ていても現金が不足してしまうのです。
例えば、売上が1,000万円あっても、売掛金として3か月後に入金予定なら、今すぐ使える現金はゼロです。そこに毎月の支払いや返済が重なると、あっという間に資金ショートしてしまいます。
黒字倒産を防ぐために経営者が知っておくべきこと
黒字倒産を防ぐには、まず「キャッシュフロー(現金の流れ)」をきちんと把握することが重要です。
経営者が意識すべきポイントは次の通りです。
・資金繰り表を作り、数か月先の資金を見通す
・利益率だけでなく、手元に残るキャッシュを意識する
・設備投資や借入金返済など、大きな支出の時期と金額を慎重に判断する
そしてもう一つ大切なのは、現金が不足する兆しが見えたら早めに対策を打つことです。
金融機関への相談、支払期限の調整、資産の見直しなど、手段はいくつもあります。手遅れになる前に行動することで、黒字倒産のリスクはぐっと下げられます。
お金が回らない原因を深掘りしよう!
「売上はあるのに、なぜかお金が足りない」
そんなモヤモヤを感じている経営者は少なくありません。
ここでは、会社にお金が回らなくなる原因をより深く掘り下げて、根本的な改善へのヒントを見つけていきましょう。
資金の流れを把握していない
まず最も多い原因が、「お金の流れが見えていない」ことです。
日々の入出金をなんとなくで把握していると、「思ったより出ていってた」「入金が遅れていた」など、見えない穴が生まれます。
これを防ぐには、資金繰り表やキャッシュフロー計算書を活用して、「いつ・どこから・いくら入って、いつ・どこに・いくら出ていくのか」を把握することが大切です。
数字が見える化されるだけで、経営判断の質がぐっと高まります。
経費や固定費が過大になっている
知らず知らずのうちに、事務所の家賃、人件費、通信費、広告費などの固定費が重くのしかかっていませんか?
売上が横ばい、または減少傾向にある中で、経費ばかりが増えていると、当然キャッシュが圧迫されていきます。特に「なんとなく続けている契約」や「効果が曖昧な広告費」は、定期的な見直しが必要です。
見直す際は、「売上に直結しているか?」「効率的な使い方になっているか?」を軸に考えると、無駄な出費に気づきやすくなります。
法人と個人の資金を混同している
小さな会社や個人事業主に多いのが、会社のお金と自分のお金を分けていないケースです。
例えば、会社の口座からプライベートの買い物をしたり、家計から会社の支払いを立て替えたりしているなど、このような資金の混同は、経理処理を複雑にし、正しい資金状況を見えにくくします。
「会社は会社、個人は個人」というように、口座も財布もきっちり分けて管理することが、お金の流れをクリアに保つ第一歩です。
税金や借入金の支払い時期を考慮していない
意外と見落とされがちなのが、定期的にやってくる税金や借入金返済の存在です。
特に、法人税や消費税は金額も大きく、納期限も集中しやすいため、「うっかり足りなかった」ということが起こりがちです。
これを防ぐには、資金繰り表やカレンダーなどに、税金や返済の予定をあらかじめ反映させておくことがよいでしょう。「あとから考えよう」ではなく、「今から備えておこう」という視点で動くことが、資金ショートを防ぐ鍵です。
急成長で仕入れや支払いが先行している
事業が順調に成長しているときこそ、実は資金繰りが苦しくなりやすいものです。
売上が伸びるほど、先に仕入れ・人材確保・外注費・広告費などの支払いが発生し、売上の入金が後から追いかけてくる構図になりやすいからです。
特に、売掛金の回収が遅れている場合や、大きな案件を一気に受けた場合は注意しましょう。「成長=お金が増える」とは限らないため、成長スピードと資金のバランスを慎重に見極めることが大切です。
資金繰りを改善するための具体策5選
資金繰りに悩んでいるときは、なんとなく漠然とした不安に包まれがちです。そんなときこそ資金繰りを改善するための対策に取り組んでみましょう。
ここでは、すぐに見直せて効果も出やすい5つの具体策をご紹介します。
入金と支払いのサイクルを整える
お金の出入りのタイミングがズレていると、たとえ黒字でも手元資金が足りなくなります。
例えば、支払いが月初に集中しているのに、売上の入金が月末にしか入ってこないなど、そんな状況だと、常に資金繰りに追われてしまいます。
改善のためには、「売掛金の早期回収交渉」や「支払日の後ろ倒し交渉」などを取引先と相談してみましょう。勇気がいるかもしれませんが、経営の安定のために大切な一歩です。
不要な在庫や資産を処分する
売れ残った在庫や、もう使っていない設備、倉庫に眠っている古い備品など、それらは、会社のお金が物に変わって滞留している状態です。
不要な資産は、売却や廃棄をして現金化することで、資金繰りの助けになります。
特に在庫は場所代や管理コストもかかるため、「必要な分だけ持つ」という意識が大切です。
思い切って整理を始めると、棚卸資産も気持ちもスッキリしますよ。
経費や固定費を見直す
毎月必ず出ていく支出は、一度見直すだけで大きな効果を生みます。
まずは、家賃、光熱費、人件費、通信費、広告費などの固定費からチェックしましょう。次に、定期購入しているサービスやツールのうち「本当に使っているか?」を見直します。
「今は使っていないけど解約していないサブスク」や「費用対効果が薄い広告」などが見つかることもあります。
削減できる部分を少しずつカットしていけば、気づかないうちにキャッシュフローが改善されていくでしょう。
銀行融資の返済条件を変更してもらう
「毎月の返済がキツい」そんなときには、銀行に相談して返済条件の見直しをお願いすることもひとつの方法です。
「返済期間を延ばす」「一定期間だけ利息のみにする」など、銀行側も柔軟に対応してくれることがあります。
大切なのは、厳しくなる前に相談することです。「どうせ無理だろう」と思い込まず、誠実に状況を説明すれば、理解を得られる可能性はあります。
資金繰り表を作成しキャッシュフローを見える化する
最後に、すべての改善策の土台となるのが「資金繰り表」の作成です。
資金繰り表は、例えば1ヶ月〜3ヶ月分の入出金予定を表にまとめるもので、「いつ、いくら必要か」「どのタイミングで資金が不足するか」がひと目でわかります。
難しい計算はいりません。エクセルや手書きでOKなので、まずは簡単な形式で始めてみましょう。
見える化することで、焦りや不安が減り、「今やるべきこと」が明確になってきます。
緊急時に使える資金調達法
「資金が足りない!」という緊急事態は、どんな会社にも起こり得ます。
焦って動く前に、まずはどんな資金調達の選択肢があるのかを把握しておきましょう。
ここでは、資金繰りが厳しくなったときに検討できる5つの方法をご紹介します。
銀行や政府系金融機関からの融資を活用する
まず最初に検討したいのが、銀行や日本政策金融公庫などの政府系金融機関からの融資です。
銀行は、信用情報や事業計画をもとに融資を判断しますが、公庫は「中小企業支援」の観点から、比較的柔軟に対応してくれるケースもあります。
銀行や日本政策金融公庫などの政府系金融機関は、利息が比較的低く、返済期間も長めに設定できます。いざというときのためにも、日頃から取引先の金融機関と良好な関係を築いておくことが大切です。
ファクタリングで早期に資金化する
「入金は来月だけど、今すぐ現金が必要に!」そんなときは、ファクタリングの活用も選択肢のひとつです。
ファクタリングは、未回収の売掛金を専門業者に買い取ってもらい、即現金化する仕組みになります。借金ではないので、信用情報に影響しません。
ただし、手数料がかかる(売掛金の5~20%程度)点には注意が必要です。一時的な資金ショートを乗り切る手段として、慎重に利用しましょう。
補助金・助成金制度を調べて活用する
国や自治体の補助金・助成金制度も資金確保の強い味方です。設備導入、人材育成、業務改善、IT導入など、幅広いテーマに対して補助が出る制度があります。
例えば「小規模事業者持続化補助金」や「事業再構築補助金」などは、該当する企業にとって非常にありがたい支援です。
申請には書類の準備や計画書の作成が必要ですが、採択されれば返済不要のお金を得ることができます。税理士や商工会議所の支援を受けながら、積極的に活用を検討しましょう。
支払い先と条件変更を交渉する
支払い先と直接交渉して支払条件を変更してもらうこともよいでしょう。「仕入れ代金の支払いを翌月にしてもらえないか」「分割払いにしてもらえないか」など、このような交渉で、今すぐの資金流出を防げる場合もあります。
もちろん、取引先との信頼関係が前提になりますが、誠実に現状を説明すれば協力してくれる企業も多いものです。支払いの延期は一時的な延命策ですが、「つなぎ」としては有効です。
ビジネスローンや手形割引を検討する
どうしても急ぎで資金が必要なときは、ビジネスローンや手形割引といったスピード重視の手段もあります。
ビジネスローンは、民間の金融機関が提供している短期資金調達法で、審査が早く、即日融資が可能なことも。ただし、金利が高い場合があるため、返済計画をしっかり立ててから利用する必要があります。
また、手形割引は、受け取った手形を期日前に現金化する方法になります。これも信用取引を前提とした手段ですが、資金繰りに困ったときのひとつの選択肢です。
>>資金繰りの最終手段3選!資金繰りで最終手段を使う前にできる5つの対策とは?
まとめ|お金が残る経営を目指すために中期経営計画を作ろう!
お金が残らない会社には、いくつかの共通点があります。売掛金の回収遅れや在庫の抱えすぎ、利益率の低さ、資金の流れを把握していないことなどが原因です。
まずは日々の資金の流れを見える化し、無駄な支出を見直すことから始めましょう。そして、利益が出ていても現金が足りない「黒字倒産」を防ぐためにも、財務の健全性を意識した経営が重要です。経営者が数字に強くなることこそが、会社を守る最も確実な方法です。
さらに、数年先を見据えた「中期経営計画」をつくることで、資金の動きを可視化し、タイミングよく手を打つことができ、黒字倒産のリスクも大きく減らせます。
将来にわたってお金が回る強い会社をつくるために、今こそ計画的な経営を始めましょう。
株式会社マストップは、将来こうなりたいと目指す姿に向かっている経営者と一緒に伴走していくMAS監査事業をおこなっています。
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