資金繰りは、経営の安定性や事業の継続性を保つという面から、いまやビジネスの成功に欠かせないものとなっています。
経営者は、資金の収入と支出のバランスをうまく調整することで、円滑な資金繰りを可能にしていますが、それは資金繰りの正しい知識があってのことです。
本記事では、「資金繰りとは何か?」から始まり、基本的な概念やメリット、目的について解説し、さらに、収入と支出の違いや現金と利益の関係、資金繰りの周期についても簡単に紹介します。
資金繰りの正しい知識と適切な対策を身につけることで、資金繰りのリスクを最小限に抑え、ビジネスの安定と成長を実現するようにしましょう。
資金繰りとは何か?
資金繰りとは、会社の経済活動を円滑に遂行するために、現金の収入と支出を管理することです。
簡単に言えば、お金の出入りを計画し、必要なときに必要なだけの資金を手元に確保することになります。
ここでは、「資金繰りとは?」を簡単に学んでもらう為、資金繰りの基本的な概念やメリット、目的などをお伝えします。
資金繰りの基本的な概念
資金繰りの基本的な概念は、キャッシュフローの管理と予測にあります。
キャッシュフローとは、現金の収入と支出の流れのことで、資金繰りにおいてこのキャッシュフローを的確に予測し、資金繰り計画を立てます。
そして、収入が支出を上回る場合、キャッシュフローはプラスとなり、逆に支出が収入を上回る場合はマイナスとなります。
資金繰りは、このプラスとマイナスのバランスを調整し、適切なタイミングで資金を調達したり、節約策を実施したりすることで、キャッシュフローの健全性を維持します。
資金繰りによる3つのメリット
資金繰りは、経営の安定性や事業の継続性に関わるため、適切な資金繰りを実践することが必要です。
適切な資金繰りを実践することで、次の3つのメリットが得られます。
資金繰りの適切な管理により、給与や債務の返済などの支払いが期日通りに行われます。これにより、取引パートナーや債権者との信頼関係を築き、信用力を維持することができます。
資金繰りの予測と管理は、経営リスクを最小限に抑えるためにとても重要です。収益の変動や突発的な出費に対応するための予備資金や融資手段を準備することで、経済的な安定性を維持し、事業の持続性を確保できます。
適切な資金繰りは、事業の成長につながります。十分な資金を手元に保持することで、新しいプロジェクトや商品の開発、市場拡大への投資など、成長を促進する活動に積極的に取り組むことができます。また、競合他社よりも迅速かつ柔軟に資金を調達できるため、市場変動やビジネスチャンスに対して素早く対応することが可能です。
資金繰りの5つの目的
資金繰りは、経営者が持つ資金に関する課題や悩みを解決し、経済活動を円滑に進めるという目的があります。
ここでは、資金繰りの5つの目的を紹介します。
収入と支出のバランスを調整し、現金の流れを安定させます。必要な時に必要なだけの資金を手元に確保することで、業務や生活のスムーズな運営を実現します。
借入金や債務の返済スケジュールを守り、金融機関や債権者との信頼関係を維持します。適切な資金繰りによって、支払いの滞りや遅延を防ぎ、信用力を保つことが重要です。
資金繰りの予測と分析を通じて、将来の経営計画や戦略を立案します。現金の流れやキャッシュフローの変動を把握することで、経営目標の達成や戦略的な意思決定に活かすことができます。
突発的な出来事や経済の変動に対して備えるため、資金繰りを適切に管理します。十分な予備資金を確保し、リスクに備えることで事業の継続性を確保し、将来の安定的な成長に対応します。
資金繰りの健全な管理は、ステークホルダー(株主・顧客・取引先など企業のあらゆる利害関係者)との信頼関係の構築にも役立ちます。企業が経済的な安定性と適切な資金繰りに努めることで、ステークホルダーからの信頼が高まります。信頼関係が築かれると、パートナーシップの強化や新たなビジネス機会の創出につながるでしょう。
資金繰りに関わる基本用語の解説
ここからは、資金繰りに関わる基本用語をお伝えしていきます。
収入と支出の違いとは?
収入と支出は、資金繰りにおいて一番重要です。
それぞれの意味と違いはこちらになります。
収入は、事業がある期間において得る金銭的な入りです。主に商品の売上高、サービスの収益、投資からの利益などの収入源から得られます。収入は、事業の持続的な運営の資金供給源となります。
支出は、事業がある期間において支払う金銭的な出費です。主に原材料や製品の調達費用、労働力の賃金、営業費用、事業拡大や改善のための投資費用など、事業運営に必要な経費が含まれます。支出は収入を上回る場合、キャッシュフローのマイナスとなり資金繰り上の課題となります。
収入と支出は、資金繰り計画や予算策定の基礎となります。収入を最大化し、支出を最適化することで、健全な資金繰りを実現することが重要です。
現金と利益の関係とは?
現金(Cash)と利益(Profit)は、会計上の概念であり、資金繰りにおいても重要な役割を果たします。
現金は、手元の実際の現金や銀行口座など、即座に使用できる流動性の高い資産を指します。資金繰りにおいては、現金は経営活動の継続に必要な支払いを行うために不可欠です。現金の適切な管理は、支払いのタイミングやキャッシュフローの安定性を確保するために重要です。
利益は、収入から支出を差し引いた残りの金額を指します。利益は、事業の経済的な健全性を評価する指標であり、事業の収益性や利益の成長を示す重要な指標です。ただし、利益は会計上の概念であり、実際の現金とは直接的な関係がありません。利益が上がっているからといって、必ずしも現金が増えるわけではありません。
資金繰りにおいては、現金と利益の関係を適切に管理することが重要です。
例えば、利益が上がっているにも関わらず、現金が不足している場合は、支払いのタイミングや売掛金の回収などの調整が必要です。逆に、現金が豊富にある場合でも、将来の成長や投資に備えるために利益を適切に再投資する必要があります。
資金繰りの周期とは?
資金繰りの周期とは、事業において現金の流れがどのような周期で発生し、回収されるかを指します。
この周期を正確に把握することは、資金繰りの計画や予測においてかなり重要になります。
それは、自社の資金繰りの周期を正確に把握することで、現金の流入と流出のタイミングを予測し、必要な資金を適切に確保することができるからです。
例えば、売掛金の回収期間が長く、支払いの期限が早い場合は、現金が一時的に不足する可能性があります。このような場合には、適切な資金調達策や売掛金の回収管理を行うことが必要になります。
資金繰りの周期は事業の特性や状況によって異なるため、定期的なキャッシュフローの予測やモニタリングをしましょう。正確な資金繰りの周期を把握し、現金の流れを管理することで、資金繰り上の課題を予測し、適切な対策を講じることができます。
資金繰りをする上で必要な3つのコツ
ここまで、資金繰りの基本的な概念やメリット、目的について解説し、さらに、収入と支出の違いや現金と利益の関係、資金繰りの周期についてもお伝えしてきましたが、実際に資金繰りをしていく上でどのようなことに気を付ければいいのでしょうか?
資金繰りに必要なコツを3つお伝えしていきます。
適切な予算編成は、資金繰りの成功につながります。まずは過去のデータや将来の見通しを基に、収入と支出の予測を行いましょう。具体的な目標や優先順位を設定し、それに基づいて予算を立てます。そして、リアリティを持たせることと、変化に柔軟に対応できる余裕を持つことが、適切な予算編成には重要です。
支払い期限の管理は、資金繰りを円滑に行うために欠かせません。まずは自社の支払いスケジュールを明確にし、納期や契約条件を把握しましょう。早期支払いの割引や遅延ペナルティなど、交渉の余地がある場合は、柔軟な交渉術を駆使して最善の条件を得ることが重要です。さらに、支払い期限に対して余裕を持つために、キャッシュフローの予測と調整も行いましょう。
緊急時に必要な資金を調達する方法を把握しておくことは、資金繰りの安定性を確保するために重要です。まずは自社の信用力を高めるために、信頼関係を構築しましょう。これによって銀行からの融資が可能になります。また、資金調達の多様な手段として、事業性クラウドファンディングや投資家との交渉などを考慮することも重要です。緊急時には迅速な行動が求められるため、事前に選択肢を把握しておくことが資金繰りの安定性に繋がります。
これらのコツを守りながら、資金繰りの管理を行っていきましょう。
資金繰りトラブルが発生したときは・・・
最後に、資金繰りトラブルに対する知識と対処法を紹介します。
知っているか知っていないかでは、大きな差になる内容なので、ぜひ知っておきましょう。
トラブルのサイン3選
実は、資金繰りトラブルが迫っている場合、いくつかのサインが現れることがあります。
トラブルのサインを見逃さず、ここで紹介する対処法をしっかりしておきましょう。
売上の減少や収入の滞りは資金繰りに影響を及ぼします。早期に売上の減少を把握し、対策を講じることが重要です。さらに、新たな販路の開拓やマーケティング施策の見直しを検討しましょう。
支払いの遅延や滞納はキャッシュフローに大きな影響を与えます。支払い予定表の確認や債務の再調整を行い、優先的に支払いを行う必要があります。さらに、買掛金の交渉や削減策を検討しましょう。
過剰な在庫はキャッシュフローを圧迫します。在庫の見直しや最適化を行い、不要な在庫の削減や仕入れの見直しを行いましょう。また、在庫管理システムの導入や需要予測の改善も検討してください。
経営危機を乗り越えるための3つの方法
長い期間、経営していると、時には経営危機に陥ることもないとは言えません。
そのような時は、次の方法を活用して乗り越えていきましょう。
経営危機には具体的な対策が必要です。業績改善計画を策定し、コスト削減策や新たな収益源の開拓など、具体的な施策を実行しましょう。経営陣や従業員とのコミュニケーションを図りながら、経営方針の見直しや効率化を進めましょう。
経営危機には専門的な知識や経験が必要です。外部のコンサルタントや専門家を活用し、経営支援やアドバイスを受けることで、新たな視点や解決策を得ることができます。効果的な経営改善策を実行するために、プロフェッショナルの力を借りることを検討しましょう。
経営危機においては、経営者の意思決定とリーダーシップが重要です。自信を持ち、困難に立ち向かう決断力を持つことが求められます。従業員とのコミュニケーションを図りながら、チームの一体感と協力体制を築きましょう。
経営危機は困難な状況ですが、適切な対策と行動を取ることで乗り越えることが可能です。
経営者として冷静な判断を下し、迅速かつ効果的な対策を実行していきましょう。
経営危機を乗り越えるために注意すること
経営危機は一人で乗り越えられるものではありません。
経営危機を乗り越えるために、次のことを注意して進めていきましょう。
経営危機では従業員の不安や懸念が高まることがあります。コミュニケーションを重視し、従業員との対話を行いましょう。現状の説明や目標の共有、協力を促すための働きかけなどを通じて、チーム全体の士気や意欲を高めることが重要です。
経営危機においては、市場や業界のトレンドを的確に把握することが必要です。競合他社の動向や顧客のニーズの変化に敏感に対応し、迅速な市場戦略の調整や製品・サービスの改善を行いましょう。新たなビジネスチャンスを見つけることで、経営危機からの脱却を図ることができます。
経営危機を乗り越えるためには、持続的な改善と学習の文化を組織内に浸透させることが重要です。経営の失敗や課題を反省し、教訓を生かすことで組織の成長と発展を促進しましょう。改善のプロセスや学習の仕組みを整備し、経営の透明性と効率性を向上させることが求められます。
経営危機は困難な局面ですが、適切な対策と意志の強さを持って取り組むことで、企業の存続と成長に向けた道を切り拓くことができます。
重要なのは問題を直視し、積極的に対処する姿勢を持ち続けるこということです。
経営危機に立ち向かうためには、問題の本質を見極め、適切な戦略を展開することが不可欠です。
資金ショートになる前にできる対策をこちらの記事でも紹介していますので、あわせてご覧ください。
>>資金ショートからの復活は厳しい?!今すぐできる7つの視点と23の質問
経営者として、冷静さと決断力、そしてチームを結集させるリーダーシップを発揮し、前向きな姿勢で問題に立ち向かいましょう。
経営危機を乗り越えた先には、新たな成長と成功が待っています。
まとめ|資金繰りとは?簡単に学んで効果的な運用をしていこう!
資金繰りとは、経営の安定性と事業の継続性を保つために、現金の収入と支出を管理することです。
資金繰りは経営において重要なものですが、基本的な概念や用語を理解し、適切な管理と戦略を取ることで、ビジネスの安定と成長を実現することができます。
また、資金繰りのコツやトラブル回避の方法などを知り、普段から適切な対策をしておくことが大切です。
経営者として、これらの知識を活用し、資金繰りの効果的な実践に取り組んでいきましょう。
株式会社マストップは、将来こうなりたいと目指す姿に向かっている経営者と一緒に伴走していくMAS監査事業をおこなっています。
当社が提供する経営計画サポートは、「現状を把握すること」「あるべき姿(目指す姿)を明確にすること」「全社員で共有すること」を促進し、ビジョンの達成、継続的な黒字経営を実現するための課題に取り組むことを支援することです。
まずは当社の中期5ヵ年経営計画立案サポート「将軍の日」をご利用ください。
また、「このままいくと5年後どうなる?」という課題を明確にする「あんしん未来診断」も随時行っております。
税務会計業務に長け、企業の未来をサポートすることに特化とした経営支援のエキスパートによるZoom解説で、経営者の方にわかりやすくお伝えする「あんしん未来診断」もあわせてご利用ください。