経営分析をしたいけど、いろんな経営指標があって何をみていいやらわからない。
また、経営指標の目安がわからないと経営分析の結果がいいのか悪いのかもわからない。
このようなお困りごとはありませんか?
会社の現状を決算書から読み取ることはとても大事なことです。
本記事では、いろいろな経営指標がある中で、5つの経営指標をみていきます。
経営指標の目安も紹介しますので、経営分析の結果からあなたの会社が今どんな状況かを把握していきましょう。
貸借対照表と損益計算書からみる5つの経営指標と目安
貸借対照表と損益計算書から経営分析しよう!と思ってもどの数字をどんなふうに見ればいいかわからないかもしれません。
それは、貸借対照表と損益計算書にはこのように数字がいっぱい入っているからです。
(左が貸借対照表・右が損益計算書)
貸借対照表と損益計算書の数字の中から、経営分析するための注目すべき5つの経営指標は次の通りです。
- 経営分析の指標①収益性をみる「総資本経常利益率」
- 経営分析の指標②資金性をみる「流動比率」
- 経営分析の指標③安全性をみる「自己資本比率」
- 経営分析の指標④安定性をみる「安全余裕率」
- 経営分析の指標⑤生産性をみる「労働分配率」
それでは、1つ1つ見ていきましょう。
経営分析の指標①収益性をみる「総資本経常利益率」
経営分析において「効率よく儲けているか?」という収益性をみる指標は「総資本経常利益率」からわかります。
「総資本経常利益率」の計算式は次の通りです。
例えば、A社とB社と2つの企業があり、どちらも経常利益が500万円だとします。
A社とB社のどちらが効率よく儲けていると思いますか?
この時点ではわかりません。
しかし、A社の資本が3,000万円、B社の資本が2,000万円だとしたら・・・
経常利益が同じ500万円でも少ない資本で500万円が得られたB社のほうが効率よく儲けたということになります。
貸借対照表と損益計算書から計算すると次のようになります。
「総資本経常利益率」の目安は、3~5%。高ければ高いほどいいと言いますが、5%以上あれば収益性に十分長けていると言えます。
経営分析の指標②資金性をみる「流動比率」
経営分析において「返済能力に問題はないか?」という資金性をみる指標は「流動比率」からわかります。
「流動比率」の計算式は次の通りです。
例えば、短期間に支払または返済しなければならない流動負債(買掛金、短期借入金等)に対して、短期間に入金または現金化される流動資産(現預金、売掛金等)がどれだけあるかをみることで、資金が滞ることがないかという資金性をみることができます。
単純に支払より入金のほうが多ければ資金が回りやすいですから、流動比率が高いほうが資金性が高いと言えます。
ただし、流動比率が高くても、売掛金の回収サイクルが遅いとか、在庫が過剰にあるとかということになると現金化されないため、資金性に不安が残ります。
逆に流動比率が低くても、売上のほとんどが現金売上だったり、在庫の回転が早い場合なら資金性に問題はありません。
流動資金と流動負債の中身にも注目する必要があります。
貸借対照表と損益計算書から計算すると次のようになります。
「流動比率」の目安は、150~200%。最低でも100%以上あるとよいですね。
経営分析の指標③安全性をみる「自己資本比率」
経営分析において「会社がつぶれないか?」という安全性をみる指標は「自己資本比率」からわかります。
「自己資本比率」の計算式は次の通りです。
例えば、総資本の中身が支払いまたは返済しなければならない買掛金や借入金ばかりだったらどうでしょうか?
資金のほとんどが他人資本(負債)に依存していることになるため、債務超過に陥る危険性がとても高くなります。
総資本の中身が他人資本より自己資本(返さなくてもいい資本金など)の割合が多いと安心です。
貸借対照表と損益計算書から計算すると次のようになります。
「自己資本比率」の目安は、50%。経済状態が良好な時に自己資本の充実を心掛けるようにしましょう!
経営分析の指標④安定性をみる「安全余裕率」
経営分析において「安定的に儲けているか?」という安定性をみる指標は「安全余裕率」からわかります。
「安全余裕率」の計算式は次の通りです。
安全余裕率=(売上高ー損益分岐点売上高)/売上高×100
※損益分岐点売上高=(販管費/限界利益率)×100
※限界利益率=(限界利益/売上高)×100
※今回、売上に対して変動する経費が他にないとして「限界利益」=「売上総利益」とみています。
例えば、売上の損益分岐点(赤字にならない売上)からどのくらい売上が上回っているか?もしくは下回っているか?を知ることができます。
安全余裕率が30%あれば「あと30%売上が下がっても赤字にならない」とみることができ、安全余裕率がマイナス20%だとしたら「20%売上を伸ばせば黒字になる」とみることができます。
貸借対照表と損益計算書から計算すると次のようになります。
※(270/40%)×100=675
※(400/1,000)×100=40%
※今回、売上に対して変動する経費が他にないとして「限界利益」=「売上総利益」とみています。
「安全余裕率」の目安は、10~20%。20%以上あれば安定性が高いと言えます。
経営分析の指標⑤生産性をみる「労働分配率」
経営分析において「人件費負担の問題がないか?」という生産性をみる指標は「労働分配率」からわかります。
「労働分配率」の計算式は次の通りです。
※今回、売上に対して変動する経費が他にないとして「限界利益」=「売上総利益」とみています。
例えば、同じ給料を出している会社でも限界利益が高いほど労働分配率は低くなります。
逆に同じ限界利益でも人件費が高いと労働分配率は高くなります。
労働分配率が低いほうが、生産性が高いとみれるのですが、それなら人件費を下げればいいかと単純に考えて給料を下げてしまうと、従業員の士気も下がり、売上も限界利益も落とすことになりかねません。
仕事の効率にムラがないか?無駄な値引きはしていないか?というように仕事のやり方の見直しや限界利益を上げることなどを考えていきましょう。
人件費が高く、それ以上に限界利益が高いため労働分配率が低いというのが理想の会社です。
貸借対照表と損益計算書から計算すると次のようになります。
※今回、売上に対して変動する経費が他にないとして「限界利益」=「売上総利益」とみています。
「労働分配率」の目安は、50%。50%を超える場合は生産性があがるよう改善点を探してしてみましょう。
経営分析の指標の目安って業種別でちがうの?
ここまで「総資本経常利益率」「流動比率」「自己資本比率」「安定余裕率」「労働分配率」の計算の仕方や目安の話をしてきました。
各経営指標の目安は次のとおりです。
経営指標 | 目安 |
総資本経常利益率 | 3~5% |
流動比率 | 150~200% |
自己資本比率 | 50% |
安定余裕率 | 10~20% |
労働分配率 | 50% |
経営指標の目安をもとに経営分析してみましょう。
また、業種別でも各指標は違ってきます。
「総資本当期利益率」「自己資本比率」「労働分配率」の3つの指標が、経済産業省「2021年企業活動基本調査速報」に業種別データ(2020年度データ)でありますので、ご紹介いたします。
※「総資本経常利益率」のデータはなかったので「総資本当期利益率」を掲載します。
2020年度 | 総資本当期利益率(%) | 自己資本比率(%) | 労働分配率(%) |
製造業 | 3.4 | 50.5 | 51.0 |
情報通信業 | 6.1 | 50.5 | 53.7 |
卸売業 | 3.4 | 40.2 | 49.7 |
小売業 | 2.6 | 43.2 | 49.4 |
飲食サービス業 | -4.9 | 36.7 | 74.9 |
合計 | 2.9 | 41.5 | 50.7 |
【参考】経済産業省「2021年企業活動基本調査速報 付表」より作成
だいたい目安どおりの指標ではありますが、業種別で特徴がありますね。
自分の業種と見比べてみると、自分の会社が今どうなのかがわかります。
実際、経営指標を計算してみてどうでしょうか?
例えば、労働分配率はいい感じだけども、自己資本比率は改善しなきゃいけないのかなぁと思うかもしれません。
このように「総資本経常利益率」「流動比率」「自己資本比率」「安定余裕率」「労働分配率」の5つの指標は、どれかが目安どおりになっていればいいというわけではなく、総合的にバランスよくいろんな指標をみていくことが大切です。
あなたの会社が今どんな状況かを把握するために、一先ずこの5つの経営指標は最低限おさえてみてはどうでしょうか。
まとめ|経営分析の指標の目安は?5つの経営指標で会社の現状を知ろう!
経営分析っていろんな経営指標があってどれをどう見たらいいか迷いますよね。
今回はいろいろある経営指標の中でも注目すべき5つの経営指標を紹介しました。
5つの経営指標の見方や意味などは、ご理解いただけましたでしょうか?
各経営指標の目安は次のとおりです。
経営指標 | 目安 |
総資本経常利益率 | 3~5% |
流動比率 | 150~200% |
自己資本比率 | 50% |
安定余裕率 | 10~20% |
労働分配率 | 50% |
他にもいろんな指標がありますが、一先ずこの5つの経営指標は押さえていきましょう!
あなたの会社が今どんな状況かを把握し、今後どう改善していけばいいかというヒントになれば幸いです。
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