資金繰り表の見方は、次の3つのポイントをおさえておくとよいでしょう。
ポイント②財務収支はマイナスになっていますか?
ポイント③差引過不足はプラスになっていますか?
簡単にお伝えすると、3つのポイントを見ることで、その後どのように資金繰り改善の対策を取っていけばいいか考えるきっかけになるということです。
資金繰り表の目的は大きく2つあります。
1つ目は資金繰り表で未来予測し、資金ショートを回避すること
2つ目は設備投資による借入のタイミングを計ること
資金繰り表の見方がわからないと、いったいいつ資金ショートがくるのか?足りない資金をどのように調達するのか?判断が遅くなる可能性もあります。
それでは困りますよね。
本記事では、資金繰り表の項目の名称を紹介し、3つのポイントでどのように資金繰り表を見ていくのかを簡単にお伝えしていきます。
資金繰り表とは?
資金繰り表は、将来の資金残高がどうなるかを未来予測するものです。
簡単にいうなら、お財布に入ってくるお金と出ていくお金の動きを予測して、今月末のお財布の中身はいくらになるか?来月はどうか?ということをみることになります。
例えば、現金商売の場合、売上も仕入も経費も現金でやりとりするので、将来の資金残高の未来予測がしやすいでしょう。
しかし、売掛金や買掛金、未払金などがあると、実際に入ってくるお金と出ていくお金に時差が生まれる為、そこを考慮に入れて資金繰り表で未来予測する必要があります。
資金繰り表はエクセルを使ってつくることができますので、あわせてご覧ください。
資金繰り表の見方!それぞれの項目の名称を紹介します!!
資金繰り表の見方といっても、それぞれの項目に何を書いていいのやらわからないと始まらないですよね。
まずは、それぞれの項目の名称を知っておきましょう。
実は、資金繰り表には決まった形式がなく、エクセルなどを使って自前で作ることが可能です。
したがって、資金繰り表によっては同じ項目でも言い方が少し違う場合があります。基本、誰が見ても意味が伝わるような名称にしておけば十分でしょう。
今回は、こちらの資金繰り表から各項目の名称を紹介します。
こちらの資金繰り表で注目すべきところは次の3つです。
- 差引過不足
- 財務収支
- 月末資金有り高
それでは、この3つの中身をみていきましょう。
資金繰り表の見方【項目の名称編:差引過不足】
はじめに、資金繰り表の「差引過不足」の中身をみていきます。
ここで注意したいのが、資金繰り表は現預金など資金の動きを知るものなので、入金または出金の金額を書いていきます。
現金売上・・・売上と同時に現金入金される金額
売掛金入金・・・売掛金が入金される金額
受取手形等取立・・・受取手形が手形決済日に入金される金額
手形割引・・・手形決済日前に手形割引で入金される金額
営業外収益・・・定期預金の解約、固定資産の売却など営業以外で入金される金額
現金仕入・・・仕入と同時に現金出金する金額
買掛金支払・・・買掛金を出金する金額
手形決済・・・支払手形を手形決済日で出金する金額
未払費用・・・未払費用を出金する金額
賃金給与・・・賃金給与を出金する金額
支払利息・・・支払利息を出金する金額
上記以外の経費・・・そのほかの経費を出金する金額
仕入れ・経費以外の費用・・・定期預金や固定資産の取得など仕入れ・経費以外で出金する金額
資金繰り表の「差引過不足」は、「差引過不足」=「収入」-「支出」で計算されますが、「営業外収益」や「仕入れ・経費以外の費用」の内訳がたくさんある場合は、次の資金繰り表のように、「経常収支」と「経常外収支」として、別枠で集計するのも一つの方法です。
※上表の訂正:月末資金有り高(H=A+D+G+J)→月末資金有り高(K=A+D+G+J)
資金繰り表の見方【項目の名称編:財務収支】
次に、資金繰り表の「財務収支」の中身をみていきます。
短期借入金・・・1年以内に返済する借入金をし、入金された金額
長期借入金・・・1年を超えて返済する借入金をし、入金された金額
短期借入金・・・1年以内に返済する借入金を返済するため、出金した金額
長期借入金・・・1年を超えて返済する借入金を返済するため、出金した金額
資金繰り表の「財務収支」は、「財務収支」=「借入金」-「借入金返済」で計算されますが、例えば「役員貸付金」や「社債発行」など、財務に関する資金の動きもこの項目に書いていきます。
資金繰り表の見方【項目の名称編:月末資金有り高】
最後に、資金繰り表の「月末資金有り高」の中身をみていきます。
「月末資金有り高」は、「月初資金有り高」+「差引過不足」+「財務収支」です。
はじめにあった資金からいろいろな入金や出金があり、最終的に残る資金のことになります。
ということは「月末資金有り高」がマイナスなったら・・・
わかりますよね。
それぞれの項目の名称にどんな金額が入るのかがわかることで、取るべき行動もみえてきます。
数字をみながら実際にどんな行動をとることで資金繰り改善につながるのか考えていきましょう。
具体的な資金繰り改善方法はこちらの記事でも紹介していますので、あわせてごらんください。
>>資金ショートからの復活は厳しい?!今すぐできる7つの視点と23の質問
資金繰り表の見方!3つのポイントで読み取ろう!!
ここからは今すぐ資金繰り改善の行動ができる簡単なポイントをお伝えしていきます。
ポイント①月末資金有り高はプラスになっていますか?
ポイント②財務収支はマイナスになっていますか?
ポイント③差引過不足はプラスになっていますか?
それでは、3つのポイントから資金繰り表をみていきましょう。
ポイント①月末資金有り高はプラスになっていますか?
資金繰り表の見方のポイントの一つ目は、「月末資金有り高はプラスになっていますか?」ということです。
前章で「月末資金有り高」は、「月初資金有り高」+「差引過不足」+「財務収支」とお伝えしましたが、「月末資金有り高」をプラスにするには次の4通りになる必要があります。
①月初資金有り高 | ②差引過不足 | ③財務収支 | ④月末資金有り高 | |
A | + | + | + | + |
B | + | + | - | + |
C | + | - | + | + |
D | + | - | - | + |
Aの場合は、①~③すべてプラスなので④の月末資金有り高はプラスです。
Bの場合は、①と②とプラスですが、③がマイナスになっています。①+②>③であれば④の月末資金有り高はプラスです。
Cの場合は、①と③がプラスですが、②がマイナスになっています。①+③>②であれば④の月末資金有り高はプラスです。
Dの場合は、①がプラスに対して②と③がマイナスになっています。①>②+③であれば④の月末資金有り高はプラスです。
①と④がすべてプラスなのは、前月の「月末資金有り高」の金額が次月の「月初資金有り高」になるため、「月末資金有り高」をプラスにするということは「月初資金有り高」もプラスになるからです。
もし「月末資金有り高」がマイナスになるようなら「差引過不足」と「財務収支」の項目で対策する必要が出てきます。
まずは、月末資金有り高はプラスになっているかどうかを資金繰り表で見るポイントとしましょう。
ポイント②財務収支はマイナスになっていますか?
資金繰り表の見方のポイントの二つ目は、「財務収支はマイナスになっていますか?」ということです。
あれ?
財務収支はプラスがいいのではないの?
そう思われるかもしれませんが、財務収支でプラスということは、借入金の入金や定期預金の解約など、いつか返すべきお金や資産の取り崩しをしていることになります。
できれば今ある資産を崩すことなく、返さなきゃいけない借入金を増やすより、借入金返済などで負債をなくしていくほうが理想でしょう。
ただし、新規事業で新しい機械を導入し、経常利益をあげていくための借入金なら先行投資としてプラスでもよいとみられます。
財務収支に関しては、内訳をみてプラスかマイナスか、どちらが適切であるか判断をする必要があります。
ポイント③差引過不足はプラスになっていますか?
資金繰り表の見方のポイントの三つ目は、「差引過不足はプラスになっていますか?」ということです。
今回は「差引過不足」のところを「経常収支」と「経常外収支」を分けている資金繰り表で見てみましょう。
まず、「経常収支」がマイナスの場合は、残念ながら事業において資金を上手く回せていないということです。例えば、試算表の経常利益がプラスだとしても、売掛金の入金よりも買掛金の出金のほうが大きければ「経常収支」マイナスになる場合があります。
黒字なのに資金繰りが上手くいかないというのがこのような状態のことを言います。
そこで、考えられる代表的な対策は次の4つです。
- 売上を上げられないか?
- 変動費を下げられないか?
- 固定費を下げられないか?
- 売掛金を早く回収し、買掛金の支払いを遅くできないか?
まずは黒字を増やすこと、そして資金を減らさないことを考えて対策しましょう。
「経常外収支」がマイナスの場合は、新規事業のために新しい機械を購入したなど、将来の利益のために投資したということが考えられます。
このようにあらかじめ投資であると理由が分かっているマイナスは、ほとんどの場合、「財務収支」のところで、借入金などがプラスになっているケースがあるので、その借入金を返していくために新規事業を上手く軌道に乗せ、「差引過不足」をプラスになるようにしていきましょう。
まとめ|資金繰り表の見方を知って会社の資金繰り改善を目指そう!
資金繰り表の見方がわからないと、本来の目的を果たすことができません。
資金繰り表の目的は大きく2つあります。
- 資金繰り表で未来予測し、資金ショートを回避すること
- 設備投資による借入のタイミングを計ること
その目的を達成させるために、資金繰り表の見方を3つのポイントで確認し、対策を取っていきましょう。
ポイント①月末資金有り高はプラスになっていますか?
ポイント②財務収支はマイナスになっていますか?
ポイント③差引過不足はプラスになっていますか?
資金繰り表の見方がわからないと、いったいいつ資金ショートがくるのか?足りない資金をどのように調達するのか?判断が遅くなる可能性もあります。
資金繰り表の見方をお伝えすることで、あなたの会社の資金繰り改善に少しでもお役に立つことができれば幸いです。
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