ビジネスを成功に導くためには、自社の「強み」や「弱み」、市場の「機会」や「脅威」を正しく把握し、戦略を立てることが不可欠です。
その手段の一つがSWOT分析です。
しかし、SWOT分析にはメリットデメリットがあり、それを踏まえた注意点を押さえることが重要です。
本記事では、初心者でも理解しやすいSWOT分析のメリットデメリットを紹介します。
自社のビジネスに役立つ戦略を立てるために、SWOT分析について理解していきましょう。
SWOT分析とは?
SWOT分析は、現状分析して今後の経営戦略の方向性を見極める際に有効な手法です。
まず、「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの要素をもって、企業の「内部環境」と「外部環境」のプラス要素とマイナス要素を浮き彫りにします。
そして、市場の流れや不測のリスクに対して企業としての打ち手を考え、経営戦略を立てていくのに役立てていきます。
プラス要素 | マイナス要素 | |
内部 環境 |
強み(Strengths) | 弱み(Weaknesses) |
外部 環境 |
機会(Opportunity) | 脅威(Threat) |
SWOT分析の3つのメリット
SWOT分析は、現状分析して今後の経営戦略の方向性を見極めるのにとても役立ちますが、具体的にどのようなことがメリットになるのでしょうか?
ここからは、SWOT分析のメリットについて3つ紹介していきます。
メリット②自社を取りまく機会や脅威に気づける
メリット③社内で共通認識を持つことができる
順にみていきましょう。
メリット①自社の強みや弱みを把握できる
SWOT分析のメリットの1つ目は「自社の強みや弱みを把握できる」ことです。
SWOT分析は、会社や組織が自分たちの状況を理解し、改善点を見つけ、戦略を立てるためのツールです。
まず、自社の強みを把握し、自分たちの得意なことや良いところを知りましょう。例えば、「商品やサービスの品質が高い」、「顧客サービスが素晴らしい」、「従業員のモチベーションが高い」などが挙げられます。自社の強みを知ることで、他の会社と競争するときに、どこが得意なのかを自覚し、自信を持つことができます。
次に、自社の弱みを把握し、改善のチャンスを見逃さないようにしましょう。例えば、「競合他社と比べて技術が劣っている」、「費用が高すぎる」、「顧客とのコミュニケーションが十分でない」などがあります。自社の弱みを知ることで、改善すべき点を見つけ出し、成長や発展に向けて取り組むことができます。
つまり、SWOT分析を通じて自社の強みや弱みを把握することは、会社が自分たちの良い点と悪い点を知り、戦略や計画を立てる根拠にすることなのです。
メリット②自社を取りまく機会や脅威に気づける
SWOT分析のメリットの2つ目は「自社を取りまく機会や脅威に気づける」ことです。
SWOT分析で外部環境における機会や脅威を理解することは、客観的に会社の状況を把握するための重要なステップです。
まず、自社を取りまく機会について考えていきましょう。外部環境では、新しい市場や顧客層、技術革新、規制緩和など、会社にとって有利な変化が起こることがあります。例えば、「競合他社が苦戦している市場」に進出するチャンスや、「新しい需要が生まれているニーズ」に対応する機会を見つけることができます。
次に、自社を取りまく脅威について考えていきましょう。外部環境では、競合他社の動向、市場の変化、規制強化など、会社にとって不利な影響を与える可能性があります。例えば、「新たな競合他社の参入」や、「技術の進化による既存製品の陳腐化」などが挙げられます。
SWOT分析は、会社が外部環境を客観的に分析し、機会を逃さずに、脅威に備えるための手段を講じるツールになります。
メリット③社内で共通認識を持つことができる
SWOT分析のメリットの3つ目は「社内で共通認識を持つことができる」ことです。
SWOT分析をすることで、社内の人々が同じ方向を向いて、同じ目標に向かって働くことができるようになります。
まず、社内で共通認識を持つために、組織全体が自分たちの強みや弱み、外部環境の機会や脅威について理解し、同じ情報を共有しましょう。SWOT分析を行うことで、これらの情報を整理するため、組織内で共通の認識を持つことができるようになります。
例えば、SWOT分析の過程で行われる情報収集やディスカッションを通じて、組織内の異なる部署やメンバーが同じ情報を共有したり、SWOT分析の結果を文書化し、報告書やプレゼンテーションとして共有したりすることで、組織全体が同じ方向に向かって行動することができます。
このように、SWOT分析を通じて組織内で共通認識を持つことができると、意思決定や戦略の立案がスムーズに行われ、組織全体がより効果的に協力して目標を達成することができるでしょう。
SWOT分析の3つのデメリット
SWOT分析のメリットがあるということはデメリットもあります。
ここでは、SWOT分析のデメリットについて3つ紹介していきます。
デメリット②主観的な判断に陥りやすい
デメリット③すべてを把握できない
順にみていきましょう。
デメリット①複雑な要素は扱いにくい
SWOT分析のデメリットの1つ目は「複雑な要素は扱いにくい」ということです。
SWOT分析は、情報を「強み」「弱み」「機会」「脅威」の4つの要素に厳密に分類するため、複雑な要因や複数の側面を持つ事柄を考慮しにくいということがあります。
例えば、会社の製品が高品質であることは「強み」ですが、同時に価格が高いと「弱み」になることがあります。顧客にとっては高品質が魅力ですが、価格が高すぎると競争力が落ちてしまうような状況です。また、新しい市場への進出は「機会」でもあり、「脅威」でもあります。新市場は成長のチャンスを提供しますが、同時に競合他社の参入や市場の飽和などのリスクも伴います。
SWOT分析は情報を簡単に整理するためのツールですが、場合によっては複雑な要素や状況を単純化して整理するのが難しいということがあります。
デメリット②主観的な判断に陥りやすい
SWOT分析のデメリットの2つ目は「主観的な判断に陥りやすい」ということです。
SWOT分析では、会社の内部環境や外部環境の要因を評価し、それぞれが「強み」「弱み」「機会」「脅威」のどれに当てはまるかを判断します。しかし、この判断が個人の主観や経験に左右される可能性があります。つまり、同じ状況や事実でも、人によって評価が異なることがあるのです。
例えば、ある従業員は会社の製品を「優れた品質」と評価する一方で、別の従業員は同じ製品を「高価すぎる」と評価するかもしれません。これは、人それぞれ異なる視点や価値観を持っているためです。このような主観的な評価がSWOT分析に反映されると、客観的な分析が難しくなり、間違った判断や誤解を招く可能性があります。
したがって、SWOT分析を行う際には、客観的な視点を保つことが必要です。できるだけ多くの情報やデータを収集し、異なる立場や意見を考慮に入れることで、より客観的な分析を行うことができます。
デメリット③すべてを把握できない
SWOT分析のデメリットの3つ目は「すべてを把握できない」ということです。
SWOT分析は、あくまである特定の時点での内部環境の「強み」や「弱み」、外部環境の「機会」や「脅威」を分析するツールです。
例えば、市場や競合他社の動向は日々変化しています。また、技術の進歩や新たな規制の導入など、外部環境の要素も常に変わっています。このような変化を完全に把握することは困難であり、SWOT分析だけでは全てを網羅することはできません。
したがって、SWOT分析を行う際には、情報の不確実性や限界を理解したうえで行うことが重要です。定期的な更新や他の分析ツールとの組み合わせを通じて、より包括的な分析ができるよう努める必要があります。
SWOT分析の5つの注意点
SWOT分析のメリットデメリットがわかったところで、どのような点に注意してSWOT分析をしていくと効果的でしょうか?
SWOT分析の注意点について5つ紹介いたします。
注意点②情報が偏らないように複数人でする
注意点③情報収集したうえで分析する
注意点④4つの要素を混合しない
注意点⑤仮説のため正解ではない
順にみていきましょう。
注意点①目的は事前に決めておく
SWOT分析を行う際に、まず最初にするべきことは「目的を事前に決めておく」ということです。
例えば、自分の会社の新しい商品を市場に導入するためにSWOT分析を行う場合、目的は「新商品の市場投入に向けて、競争力を高めるための戦略を立案すること」です。これによって、分析の焦点が明確になり、どのような情報や要素を重視すべきかがわかります。
目的がないままSWOT分析を行うことは、カーナビで目的地を入れないままドライブするようなものです。どこに行くのか、何を見つけたいのかが明確でなければ、ただ動き回るだけで、望む結果にたどり着ける可能性は低くなります。
つまり、SWOT分析を行う前に、「なぜこれをやるのか」という目的を明確にすることで、分析の方向性が定まり、効果的な結果を得るための土台が整うのです。
注意点②情報が偏らないように複数人でする
SWOT分析を行う際の注意点は「情報が偏らないように複数人でする」ということです。
一人でSWOT分析を行うと、その人の経験や視点に偏った結果になる可能性があります。例えば、ある従業員が特定の製品の強みを高く評価する一方で、別の従業員が同じ製品の弱みを指摘するかもしれません。また、会社の経営者が市場の機会を高く評価する一方で、マーケティング部門の人が市場の脅威を強調するかもしれません。
SWOT分析において、複数の人が関与することで、異なる視点や経験を持つ人々が情報を提供し、分析の客観性が確保され、偏りのないよりバランスの取れた結果が得られます。
さらに、複数人での分析では議論やディスカッションが行われることがあります。これによって、情報の抜け漏れや誤解が減少し、より包括的な分析が可能になります。
つまり、SWOT分析を行う際には、複数の人が参加することで、より信頼性の高い分析結果を得ることができるのです。
注意点③情報収集したうえで分析する
SWOT分析を行う際の注意点は「情報収集したうえで分析する」ということです。
SWOT分析では、内部環境の「強み」や「弱み」、外部環境の「機会」や「脅威」を評価します。しかし、これらの要素を正確に評価するためには、情報が欠かせません。
情報収集を怠ると、分析結果が不完全になったり、誤った判断をする可能性があります。例えば、競合他社の市場参入計画を把握せずに分析を行うと、市場の脅威を正しく評価できないかもしれません。また、自社の強みや弱みを客観的に把握するためには、顧客のフィードバックや従業員の意見などの情報も必要です。
そのため、SWOT分析を行う前に、必要な情報を集めてから分析を行うことが重要です。情報収集を怠らず、客観的かつ包括的な分析を行うことで、より正確な結果を得ることができます。
注意点④4つの要素を混合しない
SWOT分析を行う際の注意点は「4つの要素を混合しない」ということです。
SWOT分析では、「強み」「弱み」「機会」「脅威」の4つの要素が異なる観点から評価されます。内部環境の「強み」や「弱み」は、組織自体が持つ特性や能力を指し、外部環境の「機会」や「脅威」は、組織に影響を与える外部の要因を指します。4つの要素を混合してしまうと、分析結果があいまいになり、適切な戦略や施策を立案する上で混乱を招く可能性があります。
例えば、会社の製品の高品質(強み)が市場の成長(機会)を引き起こすと考えることができますが、これは実際には内部の強みと外部の機会を混同していることになります。SWOT分析では、これらの要素を明確に区別して評価し、組織内外の状況をより正確に把握することが求められます。
そのため、SWOT分析を行う際には、4つの要素が異なる側面を表すことを意識して、それぞれを明確に区別して評価することが重要です。これによって、より的確な分析結果が得られ、組織の戦略立案や意思決定がより効果的に行われるでしょう。
注意点⑤仮説のため正解ではない
最後に、SWOT分析を行う際の注意点は「仮説のため正解ではない」ということです。
SWOT分析は、内部環境の「強み」や「弱み」、外部環境の「機会」や「脅威」を評価し、組織の現状や環境を把握するためのツールです。しかし、これらの評価はあくまで一定の時点での見解であり、将来の状況や変化を予測するものではありません。
例えば、SWOT分析によって特定の市場が機会と評価されたとしても、実際にその市場に参入してみたところ、予想とは異なる結果になることもあります。また、組織の強みとされた特定の製品が、市場の変化や競合他社の動向によって弱みとなる可能性もあります。
したがって、SWOT分析を行う際には、その結果を絶対的なものとして受け入れるのではなく、あくまで仮説として捉えることが重要です。そして、定期的な更新や修正を行うことで、変化する状況に対応し、より効果的な戦略を立案することができます。
SWOT分析の5つのステップ
それでは、SWOT分析のメリットデメリット、注意点を考慮に入れてSWOT分析を作っていきましょう。
SWOT分析の5つのステップを順にみていくことで、SWOT分析の作り方がわかりますので、実践してみてください。
【STEP2】外部環境である「機会」と「脅威」を書こう!
【STEP3】内部環境である「強み」と「弱み」を書こう!
【STEP4】クロスSWOT分析で経営戦略の方向性を見極めよう!
【STEP5】具体的なアクションプランを立てよう!
【STEP1】目的意識を持とう!
【STEP1】では、目的意識を持つことをお伝えします。
SWOT分析を始める前は、何のためにするのか?という目的意識を持つことが大切です。
なぜなら、目的意識がないと重要性の低い内容や目的と関連性のない内容も列挙されてしまい、せっかく挙げた内容をどのように活かしていいのかわからなくなるからです。
「こうなりたい」という目的意識をもってSWOT分析をすることで、無駄なく網羅された内容を引き出すことができます。
【STEP2】外部環境である「機会」と「脅威」を書こう!
【STEP2】では、外部環境である「機会」と「脅威」を書いていきましょう。
まず、SWOT分析の「機会」は、自社にとってビジネスの機会となるような環境変化を挙げていきます。次に、SWOT分析の「脅威」は、自社の強みでもなかなか太刀打ちできないような環境変化を挙げていきます。
このとき、次の4つの項目から「機会」と「脅威」を考えてみるとよいでしょう。
- 経営環境の変化/業界の動向
- 法律の改正
- 同業他社の動向
- 顧客の変化
こちらの記事では、SWOT分析の機会と脅威の具体例と見つけ方について紹介しています。あわせてご覧ください。
【STEP3】内部環境である「強み」と「弱み」を書こう!
【STEP3】では、内部環境である「強み」と「弱み」を書いていきましょう。
まず、SWOT分析の「強み」は、自社の長所となるところを挙げていきます。次に、SWOT分析の「弱み」は、自社の短所となるところを挙げていきます。
このとき、次の5つの項目から「強み」と「弱み」を考えてみるとよいでしょう。
- 経営者
- 人
- 販売
- 生産
- 財務
とらえ方によっては、SWOT分析の「強み」と「弱み」は表裏一体にもなるのかもしれません。
自社にとって「強み」と「弱み」のどちらになるかは目的に合わせて決めていきましょう。
【STEP4】クロスSWOT分析で経営戦略の方向性を見極めよう!
【STEP4】では、クロスSWOT分析で経営戦略の方向性を見極めていきます。
クロスSWOT分析の4つの組み合わせは次の通りです。
- 「強み」×「機会」・・・強みと機会を最大限に活かしてできることは何か?
- 「弱み」×「機会」・・・弱みによって機会を逃さないようにできることは何か?
- 「強み」×「脅威」・・・強みを活かして脅威を克服するためにできることは何か?
- 「弱み」×「脅威」・・・弱みと脅威によって訪れる危機を回避するためにできることは何か?
このように、SWOT分析の「強み」「弱み」「機会」「脅威」の4つの要素で導き出された情報を掛け合わせることで、今後の経営戦略の方向性をさらに見極めていきましょう。
こちらの記事では、クロスSWOT分析について更に詳しくお伝えしています。あわせてご覧ください。
>>クロスSWOT分析のやり方は?具体例を組み合わせごとに紹介!
【STEP5】具体的なアクションプランを立てよう!
【STEP5】では、具体的なアクションプランを立てていきます。
アクションプランを立てる方法の1つとして、バランス・スコアカード(BSC)などのフレームワークを使うのもよいでしょう。
バランス・スコアカード(BSC)とは、経営的視点として不可欠な「財務の視点」「顧客の視点」「業務プロセスの視点」「人材と変革の視点」を使って、経営戦略の実現を可能にします。
こちらの記事で事例を挙げて説明していますのであわせてご覧ください。
まとめ|SWOT分析のメリットデメリットに注意して現状分析しよう!
ここまで、SWOT分析のメリットデメリットを紹介してきました。
メリット①自社の強みや弱みを把握できる
メリット②自社を取りまく機会や脅威に気づける
メリット③社内で共通認識を持つことができる
デメリット①中間的な情報は考慮しにくい
デメリット②主観的な判断に陥りやすい
デメリット③すべてを把握できない
SWOT分析は、ビジネス戦略の策定において貴重なツールです。
しかし、その効果を最大限に引き出すためには、目的を明確にし、情報収集に注意を払い、複数の視点を取り入れ、要素を正しく区別することが必要です。
また、SWOT分析の結果は仮説であり、将来の変化に対応する柔軟性が求められます。
このように正しく実施されれば、SWOT分析はビジネスの成長に大きく貢献するでしょう。
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